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主な歴史ソルティアch → ランスch → ヤリチンch → ランスch → ハイパーランスch → らんす → ランス(現在) 主な歴史 ソルティアch → ランスch → ヤリチンch → ランスch → ハイパーランスch → らんす → ランス(現在) 源氏名:工藤ランス 121人以上も女を抱いた漢 チンコが27cmあるとの伝説をもっている FEZ界のトッティ R2 好きな体位は側位 レス返しが丁寧で簡潔かつおもしろい レス職人多数在住 井上陽水のマネがおもしろい 低反発枕所有 道を歩けばホストの勧誘を受ける 道を歩くだけで周囲の♀は妊娠する 元プロドライバー でもGTA4では轢き逃げ常習犯 むしろ轢いた上から往復する 高校の時に持田香織似の子と付き合っていた(ウメブー) 日本初ビートバンオナニーを実践した漢 蒟蒻オナニーでちんこ火傷した事がある マカロニオナニーも実践済 英語は得意(自称) 実は国語の方が得意 謎のセールスマン→ホスト→運び屋→鍛冶屋を経て 重要な任務に就くのに国家資格が必要なため学生として潜入中 Youtube さぁ!SURFACE http //www.youtube.com/watch?v=O9V37wJ_9qw PCスペック CPU:Corei7 2500K めもり:4GB グラボ:GTX460 コンタクト(ご自由に登録どうぞ) 【skype】rancekun 【Twitter】ransu1009(ファラミー) 【Steam】rancech 【mail】 最終更新日時 2012/09/22 12 13 09
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開催予定 FGO式第四章 6/2(日) 21 00~ 第十一次 ?/?() 21 00~ トレーラー Trailer from YouTube 貴方宛てに届いた、一枚の招待状。 《孔》の中に見える街。 入り乱れる真実(シリアス)と真実(ギャグ)。 零と全を内包する虚構世界。 或る少女の願いは聞き届けられ、優しき夢幻の杯を生む。 誓いと願いの交差点、想起するは《人類悪》。 思惑入り乱れる騒乱の果てに、遊戯聖杯を手にするのは、果たして―― ハウスルール ルール記載サイトの『サーヴァント』に記述のあるクラスは使用可能。 参加者間でのクラス被りあり。 1つ以上の令呪、もしくは6以上の英雄点を使った【スキル】は禁止(クラススキルを除く)。 2つ以上の令呪、もしくは6以上の英雄点を使った【宝具】は禁止(令呪1つ+英雄点5点も不可)。 【宝具】を3つ以上持ったサーヴァントは禁止。 同じ効果のマスタースキルは重複不可。 その他、ルールに沿ったシートであれば基本的に許可。 お助けサーヴァントルール 交戦フェイズ開始時、自陣営のサーヴァントの人数が相手陣営未満であった場合に宣言可能。 令呪を一画消費し、『Support Servant』という枠にいるサーヴァントを任意に一体選び同盟を結ぶ事が出来る。 「交戦フェイズ終了」「お助けサーヴァントの敗退」「同盟陣営の敗退」の条件が満たされた場合、同盟は破棄される。 また、以下の特殊ルールが適応される。 お助けサーヴァントは能力値に関係なく、交戦フェイズに一回「判定の振り直し」を行える。 同盟陣営はお助けサーヴァントに対し、令呪を使用できる。 セッションログ・FGO式 第一章「生死逢瀬境界ヨモツヒラサカ」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/59 第二章「冥焔呪怨戦争オケアノス」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/62 第三章「表裏超越王国ワンダーランド」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/63 第四章「虚数紅夢魔海エデン・パンタシア」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/64 セッションログ・冬木式 第一次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/34 第二次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/35 第三次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/36 第四次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/37 第五次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/38 第六次 Twitterにて行われたセッションです https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/39 第七次 ログ喪失の為掲載不可。 第八次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/40 第九次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/41 番外・夏 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/42 第十次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/57 世界観 この酔狂な聖杯戦争が行われる空間は、通常の世界線とはかけ離れたところにある。 並行世界の狭間に浮き、「世界のどこでもない場所」としてあらゆる世界と隔絶されているのだ。 また、この空間はその主の意志により門を開き、どこかの並行世界から人を連れてくることもできる。 そのため、この聖杯戦争は世界線の如何を問わず受け入れる。 もしかしたら、誰もが思いもよらぬ邂逅も在り得るかもしれない。 人物 謎のヒロインT 【年齢】不明(外見10代後半) 【性別】女性 【所属】なし 並行世界の狭間に浮かぶ空間、固有結界「遊戯聖杯」の主。 魔術協会もその動向を追い切れておらず、現在に至るまで素性は不明。 規格外の魔力炉とあらゆる魔術を使いこなし、現代の魔術師はおろか、単体でサーヴァントを圧倒しうる実力を備える。 一説には、過去に時計塔天体科にて観測された「全世界における大気魔力の増幅現象」に関係があると目されている。 アルターエゴ 【年齢】不明(外見10代前半) 【性別】女性 【所属】なし ヒロインTが従える、探偵風の装いのサーヴァント。 一見するとその霊基の強度は普通の少女と大して変わらず、本人も自身を「ただの少女」と評している。 マスター曰く「最終抑止装置」とのことで、普段は街を模した結界内のカフェで紅茶を啜っているらしい。 その他の設定 固有結界「遊戯聖杯」 謎のヒロインTの固有結界。 彼女の主催で行われる聖杯戦争の舞台として設定されており、小さな街と同規模の空間を備える。 また、街としての各設備(店舗、工場、駅など)はすべて整っており、現実における街と何ら変わりのない風体となっている。 この空間内に生命体はおらず、街の営みはすべて人型を模した擬似生命が行っている。 擬似生命の再現度はすさまじく、傍から見れば言動共に人間そのものにしか見えないほど。 但し、これらは結界内でのみ作動する仕組みのようで、使い魔などとして外に出すことは行われない。 霊地は街の中央にある湖。 魔力を含んだ水で満ちており、これを摂取することで失われた魔力の回復などを行える。 Café de Graal 結界内に存在するカフェテリア。 席数はそれほど多くなく、レトロな装飾と店内音楽のジャズ・ミュージックが落ち着いた雰囲気を演出する。 この店は監督役が直接運営しているらしく、聖杯戦争中は中立地帯となっている。 そのため、監督役を頼る場合はここに行けば出会えるだろう。 オススメ商品は、ハニーマスタードが食欲をそそる「バゲットサンド(ハムチーズ)」で、お値段は390円。 紅茶は常駐する少女の趣向で最高級のブランド品となっている。
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聖杯戦争序幕 ~ 宙船、来たる ~ ◆eBE8HIR9fs ――地球には、もうひとつの月があるという。 複数の月が登場する神話を持つ文明は多い。 古代中国の射日神話と同様に、英雄が多すぎる月を射落とす伝承は各地の文化に散見される。 また伝承の研究ではなく科学として、実際に19世紀末には第二の月の実証を研究する学者も現れた。 例えばフランスの天文学者プチはクラインヒェンなる衛星の存在を主張し、同様の説を掲げた別の研究者も存在する。 サイエンスフィクションの祖と賞されるジュール=ヴェルヌもかの代表作「月世界旅行」にて同様の天体を登場させている。 しかし、その実証への道程は果てしなく遠く、そして限りなく不可能に近かった。 あるものは計算式に誤りを見つけられ、またあるものは理論に見合う結果を見出だせなかった。 また観測技術の向上により、光学的に捕捉できない衛星という最後の逃げ道も消失した。 ゆえに地球の衛星は今なお、月ただひとつとされている。 そういうこととされている。 ただ、それは物理世界の側面から見た話にすぎない。 遥か以前から魔術師達やそのルーツのひとつたる占星術師達は、地球の衛星軌道を周回する存在を感知していた。 地球を中心として遠大な楕円軌道を描く謎の物体が数十年おきに接近するという事実は、ごく限られた人間しか知らない。 しかし、それはその物体の持つ秘密の一端に過ぎない。真実を知る者は、更に限られる。 曰く、自然物ではなく被造物。あれは、『星』ではなく、『船』だ――と。 何らかの魔力的な撹乱により今まであらゆる物質世界の学者に捕捉されなかったその『船』の謎を、魔術師達は追い求めた。 失われた神代の『古代遺物(アーティファクト)』。星の海を巡り地球を廻る『宙船(そらふね)』。 その存在を知る者はそれが地球に接近するたびにあらゆる手段を用いてその謎へと近付くべく挑み、 やがては親が子に魔術刻印を受け継がせるがごとく、その蓄積された研究成果を知識として次の世代へと託した。 そして永い時を経て観測値(データ)は集約され、それが真実であれば魔術世界を揺るがすであろう結論が導き出された。 あまりに壮大過ぎる結論を、多くの者は幼稚で荒唐無稽な与太話(パルプフィクション)だと一笑に付した。 しかし全ての魔術師がその『船』を追うことを諦めたわけではない。 かつて人間が月を目指したように、第二の月たる『船』を目指す者は尽きはしなかった。 そして、現代。 『宙船』は遙かなる星海の旅を終えて地球圏に帰還し、じきに最接近の時を迎えようとしている――! ▼ ▼ ▼ 「……何故このような話をしているのか分からない、という顔だな、綺礼」 「は……」 当惑を見透かされた言峰綺礼は、卓を挟んで向かい合う父、言峰璃正に対して曖昧な返事を返した。 綺礼は曖昧な物言いをする類いの人間ではないが、父はそれ以上に意味のない冗談を好む人間ではない。 その父がこうして改まって話をする以上は、この突拍子もない話にも何らかの理由があるに違いない。 そう思ったからこそ綺礼はそれ以上の言葉を返さず、思案した。 冬木の第四次聖杯戦争に備え、綺礼が父の歳の離れた友人、遠坂時臣に師事してもうすぐ三年になる。 本来は異端者を討滅することを生業とする聖堂教会の執行者である綺礼がこうして魔術を学んでいるのは、偏に父と師との盟約にある。 万能の願望機たる冬木の聖杯を、もっとも相応しき主たる遠坂時臣の元にもたらせ。その為に陰から時臣の戦いを支えよ。 それが来るべき聖杯戦争における言峰綺礼の役目であり、それは自分自身も納得済みである。 それがどうして、このような天文ショーの紛い物の話を聞かされているのだろうか。 もうじき遠坂・間桐・アインツベルンの御三家だけでなく、外来のマスター達も戦いの準備を整えてくるだろう。 専念すべきは聖杯戦争の備えであって、このような話はそれこそ占星術師にでも任せるべきではないか。 綺礼はまずそう考え、次にこの状況であえて「自分に話さねばならない理由」へと思いを巡らせた。 「……父上。それは、魔術協会だけでなく聖堂教会にとって見過ごせぬものである……と、そういうことでしょうか」 「聡いな、綺礼よ。だがそれは真実であっても全てではない。お前の今の立場にも関係のある話だ」 「私の、今の、立場ですか」 噛み砕くように繰り返して口にする。 聖堂教会の代行者、という意味ではあるまい。それでは教会の問題であることに変わりはない。 そうでないならば。魔術師としての……あるいは聖杯戦争のマスターとしての? 無意識に口元に手をやった綺礼を見、璃正は先回りするかのごとく口を開いた。 「――綺礼よ。聞いたことがあるかね、月こそはこの世界最古の古代遺物(アーティファクト)であると」 今度ばかりは綺礼は本当に父の言葉の意味を測りかねた。 しかし父の目は真剣そのものであり、その視線には理性の光が確かに灯っている。 これまでの話と同様に冗談を言ったわけではなく、ましてや耄碌して妄言を吐いたとは思えない。 綺礼は努めて冷静に、否定の言葉を口にした。 「――いいえ。父上は、あの月が人工物であると?」 「人の手によるものではない。神の御業だよ。月はあらゆる時の流れの中で、この地球を観測し続けているという。 これはこの老骨の与太話ではない。知る者は限られているが、魔術協会では既に封印指定の取り決めが成されたと聞く」 封印指定といえば、魔術協会が触れ得ざる遺産足りうると指定した魔術を術者ごと永久保存する措置のことだ。 だが魔術師ではなく遺物が封印されるなどという事態は耳にしたことがない。 「封印の必要があるほどまでに魔術師が手を出すには大それた遺物、ということですか」 「それどころではない。月……『ムーンセル』はあらゆる事象を演算し、記録し、その結果として現実すら改変しうるという。 この世の理を根本から打ち崩しかねん、人の子には過ぎたるもの……真なる万能の願望機よ」 「万能の願望機……それではまるで、」 聖杯だ。 綺礼はそう言いかけ、そこでようやく父が謎の天体の話を持ちかけた理由に思い当たった。 月が願望機であるというという話は俄には信じがたいものではあるが、それが事実だという前提に立てば。 聖杯戦争のマスターである綺礼にとって、天体は聖杯と同じかそれ以上の重みを持つのだとすれば。 「このたび地球に接近するというその『船』が『月の聖杯』と関係があるものだと、父上や教会の者達はお考えなのですね?」 綺礼の言葉に年老いた父は僅かに驚きの表情を見せ、それから皺の刻まれた顔に満足気な笑みを浮かべた。 「その通りだ。月を手にすることは叶わなくとも、あれを手にすることは出来る、とな」 「少なくとも、それが願望機に準ずるものであると仰るように聞こえますが」 「正確には、月へと干渉しうる装置といったところか。願望機そのものではなく、月の願望機への道しるべよ」 装置、という言葉に引っかかりを覚える。まるで『船』が何かの働きを為すための物であるかのような。 その思考をそのまま父が引き継ぐ。息子の虚無こそ知らぬ父だが、こういう阿吽の呼吸は親子である。 「あれの本質は演算装置なのだ。もっとも、月――『ムーンセル』同様、本当に人の手で作られたとは限らんがな」 「既に観測がなされているのですか」 「前回の接近時に、魔術師達が血眼で調査した結果だ。ムーンセルの間に魔術的な交信が行われているという事実も明らかになっている」 魔術師達も無駄に手をこまねいていたわけではないらしい。綺礼は他人事のように感心した。 「そしてその理由も既に推測が付いている。『船』はそれ自体が演算装置であると同時に、いわば月の子機とも言うべき存在なのだ」 「と、いうと」 「あの『船』はそれの存在目的を果たすため、月に蓄積された観測結果と演算能力を使用しておるのだ――ときに綺礼、あれは何で出来ていると思う?」 脈絡のない唐突な質問に、綺礼は思案する。 「素材ですか。被造物であれ天体ならば、鉱物と考えるのが自然では」 無難な回答を返した綺礼に、父は自分自身も信じ切れていないかのような表情で応えた。 まるで自分のこれから告げる真実が綺礼の想像を凌駕していることを象徴するように。 「――木材だよ。あれはこの地上に存在しない種類の木で出来ているという。 この事実を知る魔術師達は、最終的にこの結論へと辿り着いた――すなわち、あれこそが『ゴフェルの木』だと」 「――『ゴフェルの木』?」 初め、綺礼は聞き間違いかと思った。 この星の歴史において、『ゴフェルの木』で作られた構造物はただのひとつしかない。 父も教会の神父である以上それを知らないはずはなく――そして、知っていながら訂正しようとしない。 「うむ。魔術的なノイズにより正確な大きさは測定出来ずにいるが、その長さは三百、幅は五十、高さは三十の比を持つ箱形であると判明している。 いいかね、三百、五十、三十の箱形だ。それも未知の木材で覆われた、な……聡明なお前ならここまで言えば分かるだろう、綺礼」 それは聖書の一節。幾度となく目を通した数字。 三百キュビト、五十キュビト、三十キュビト。 滅多に動揺を見せない綺礼の頬を、一筋の汗が伝った。 「――――馬鹿な」 続いて声に出せたのはそれだけだった。 しかし父の視線が、表情が、これが冒涜的な類いの冗句ではないと語っていた。 呆然とする綺礼の意識へと沁み入るように、璃正の沈着かつ毅然とした声が響く。 「聖堂教会は判断した。このたび地球圏に帰還した被造物が、聖遺物『ノアの方舟』である可能性は否定できんと。 聖遺物回収は我ら『第八秘蹟会』の責務。言峰綺礼よ、汝の任はこの『方舟』の確保にある」 ――軌道上に存在する古代遺物(アーティファクト)は旧約聖書に謳われる『方舟』であり、月の願望機の鍵であると、そう言うのか。 綺礼は息を吸って、吐いた。 「――確保。方策は、あるのですか」 荒唐無稽の極みだ。聖者ノアの聖遺物が、今も星の海を航海しているなどと。 しかし、教会にとってそれの真偽がどちらであれ確保の必要性に変わりはないのだろう。 後世の遺物であろうと放置する理由にはならないし、それが願望機としての性質を備えているのならば尚更だ。 綺礼は既に任務遂行の手段へと思考を巡らせていた。それを見、璃正は頷く。 「ある。『方舟』の存在意義とは種の記録の保存……かつて『方舟』に乗った生命のうち、人間だけが一対でなかったのは知っているだろう。 故に『方舟』は地球に接近するたびにムーンセルから記録を受け取り、同時に地上の人間を内部の世界に召喚しておるようだ」 伝承によれば、方舟に乗り込んだのはノアとその妻、三人の息子とそれぞれの妻。 人間だけが一対の存在ではなかったために、方舟は使命を遂行するために今も自動的に稼働しているということか。 ならば男女のつがいが必要なのか、という綺礼の問いに璃正は首を振った。 「そうではない。男女のつがいではなく、いわば過去と現在、あるいは未来。時代、更には世界を繋ぐ一対のつがいだ。 地上の人間と月に保存された英霊の記憶とを組み合わせ、生き残りを賭けて戦わせ、真に記録すべき一対を選別する――『方舟』はその為にある」 そうして情報として残すべき一対の魂の選別を、方舟は地球圏に帰還するたびに行っているという。 綺礼は眩暈を覚えた。冬木の御三家達はあらかじめこの事実を知っていたのだろうか。 偶然一致したのか御三家の最初の誰かがこの事実を参考にしたのか。どちらにせよ、 「……まるで聖杯戦争ですね」 「そう、聖杯戦争だ。これは紛れもなく、万能の願望機に連なる聖杯戦争に違いないのだ、綺礼よ。 そして最後まで勝ち残ることが出来たならば、方舟から願望機たるムーンセルへの道が示されると推測される。 お前が為すべきは、方舟のマスターとしてこの聖杯戦争に参戦し、万能の願いをもって方舟を手にすることだ」 綺礼は深呼吸した。 未だに信じがたい話ではある。しかし、そこまで分かれば十分だった。 冬木の聖杯戦争の前哨戦にしてはあまりにも壮大ではあるが、与えられた役目ならば果たすだけのこと。 そして元より、言峰綺礼に意志など無いのだ。 「――了解いたしました。この言峰綺礼、父上と聖堂教会に、必ずや勝利を」 綺礼の答えに、老いた父は改めて満足した顔で頷いた。 ▼ ▼ ▼ ――ひと月の後。 綺礼は万全の準備を整え、ひとり夜空を見上げていた。 師である時臣には、この試練のことはせいぜい数日ほど師の元を離れるとしか話していない。 時臣は純粋に、この離脱を冬木の聖杯戦争に備えるための戦支度として受け止めているだろう。 無論綺礼も冬木での戦争を放棄したわけではない以上、師の認識は決して間違いというわけではない。 しかしこれはあくまで第八秘蹟会の代行者としての任務であり、時臣には無関係と判断しただけのことだ。 表向き魔術協会とは敵対関係にある聖堂教会にとって、信頼できる魔術師の戦力は極めて少ない。 ゆえに綺礼に白羽の矢が立ったのはある意味では自然だが、それ以外に教会よりの傭兵魔術師が参加する可能性があると父は言った。 教会も一枚岩ではない。いくら方舟が『ノアの聖遺物』であるという確証はないとはいえ、動く者は動く。 また方舟そのものに価値を見出す者が、教会同様に傭兵を雇う可能性もある。あるいはカネ目当ての者も。 加えて単純に、己が願いを叶えるために参戦する魔術師もいるだろう。冬木における外来のマスターのように。 いくら緘口令のようなものが敷かれているとは言っても、そもそも璃正の情報の出処は魔術協会の側である。 魔術師の中にはとっくの昔にその情報を入手している者がいると見て間違いないだろう。 すでに綺礼の周りは既に敵だらけと言ってよかった。 今、綺礼の掌の中には、小さな古ぼけた木片が握られている。 一見何の変哲もない木片だが、これが方舟の構成材と同じ『ゴフェルの木片』であると聞かされている。 この地上には存在しない樹木では無かったのかと問うた綺礼に、父は「最初に脱皮した蛇の抜け殻」よりは容易に手に入ると答えた。 要は、あるところにはある、ということだ。もしも世界中に散逸しているのだとしたら、それは厄介だが。 偶然ひょんなことからこの木片を手に入れてしまう人間がいなければいいと、そう祈る他ない。 方舟の媒介たるこの『ゴフェルの木片』に願いを通わせる。聖杯戦争への鍵は、ただそれだけだ。 その願いを感知した方舟が、その内部……『アーク・セル』とでも呼ぶべき演算世界へと魔術師を召喚する。 そして、それぞれに相応しい使い魔たる英霊……『サーヴァント』を、月の記憶を介して降臨させるのだ。 過去アーク・セルに召喚されたとされる魔術師は全て同じ日同じ時間に姿を消したわけではないという。 方舟の力が時空を越えるものであるとするならばそれこそ魔法の域だが、それを証明するのは困難だろう。 綺礼は木片を握りしめた。 言峰綺礼には意志がない。 正確には、熱意が、渇望が、目的意識というものがない。 今まで幾多の巡礼でこの身を焼き、幾多の異端を屠り続けて、しかし何一つ得ることなくここまで来た。 冬木の聖杯戦争へと至る前に転がり込んできたこの試練は、綺礼に答えを与えてくれるのだろうか。 そうであればいいと思う。その思いは、願いと呼ぶにはあまりに熱を持たないものではあったが。 夜空を見上げる。この遥か彼方に、目指す神代の遺物がある。 心中で幾度となく繰り返した呪文を唱える。この聖杯戦争には必要のないものとは分かっていても、だ。 (――告げる。汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ) 手中の木片へと思念を集中させる。空っぽの願いを使命で上書きした瞬間、木片が熱を持つのを感じた。 (誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者) 大気に満ちる魔力(マナ)が、綺礼を中心として渦巻く。方舟の秘蹟が、今顕現しようとしていた。 (汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!) 綺礼は遥か星空に浮かぶであろう方舟を睨み、そしてこの地上から忽然と姿を消した。 ――この日。『方舟』は、地球圏へと真の意味で帰還した。 BACK NEXT 聖杯戦争開幕 投下順 OP.2 月を望む聖杯戦争 聖杯戦争開幕 時系列順 OP.2 月を望む聖杯戦争 BACK 登場キャラ NEXT 参戦 言峰綺礼 001 言峰綺礼・セイバー
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――月が/地球が、見ている。 Λ Λ Λ Side Earth ――月。 それは度々、神秘の象徴として扱われる。 月の満ち欠けは人間に度々影響を与え、満月は人を狂わせてきた。 魔術師にとっても、儀式などを行う日時を自分にとって調子にいい月齢に合わせるというのはよくある話だ。 ――太古から地球と共にあった月は同時に、地球をずっと見てきた監視装置でもある。 そのような言説は、長くから魔術師達の間では取り沙汰されていた。 ――ムーンセル・オートマトン。 月で発見された、太陽系最古の遺物。神の自動書記装置。七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)。 その情報改竄能力だけで現実世界の書き換えを可能にする観測機。 その起源は定かではない。 異星の文明による地球の記録装置であるという噂もあれば、神による聖遺物であるという説、あるいは並行世界から現出した、全ての並行世界の観測機であるという話。 噂には枚挙が暇無く、どの噂が真実なのか、――あるいは、どの噂も真実なのかは判然としない。 『あなた』がそのムーンセルに興味を持ったのは、ある噂からだった。 ――ムーンセルは周期的に地上の人間をその内に迎え入れ、『聖杯戦争』を行わせる。 聖杯戦争。『聖杯』を奪い合う、英雄達とそのマスターによる殺し合い。 ――その勝者は、万能の願望機である聖杯の使用権が与えられる。 ムーンセルが何故そのような催しを行うのかは、はっきりとしない。 その存在理由から考えれば幾らかの推測は立つが―― 推測はあくまで推測であり、確固とした結論としては程遠い。 ――さて。 『あなた』は聖杯戦争に挑もうとする者の一人だ。 その目的は聖杯を手に入れるためか、あるいはムーンセルの目的を知るためか、はたまたまったく別の理由か。 ともあれ、確固たる目的を持って月へと向かおうとしているか――あるいは、ただ単に『条件』を満たした故に巻き込まれただけかもしれない。 参加条件は二つ。 『月の石』。 これが聖杯戦争への片道切符であり、願いを手に入れるための半券。 そして――その裡に『願い』を抱いていること。 奇跡を欲するならば、汝―― Λ Λ Λ Side Moon ――そして、『あなた』は目を覚ます。 ムーンセルによって参加者を選別するための『予選』。 記憶を奪われた偽りの生活の中で、『あなた』はその才能か、若しくは願いか――或いはその両方かで、自らの記憶を取り戻して予選を突破した。 「――ようこそ」 「貴様が新たなマスターか」 取り戻したばかりの意識に、誰かの声が聞こえてくる。一人――いや、二人だろうか。 とてもよく似た声だから、一瞬同じ人物と錯覚したが――よくよく聴けば、声のトーンはかけ離れている。 霞む目を凝らして、前方へと目を向ければ―― 二人の英霊が、そこに立っていた。 右に立つのは白の姫騎士。 白い鎧姿に金髪のポニーテールの彼女は、ややもすれば目を奪われそうな美貌と、凛とした正統な英霊足る気配を同時に兼ね備えている。 左に構えるのは黒の暴君。 漆黒の鎧兜から垣間見える青白い顔は、隣に佇む白の姫騎士と同じ貌を讃えながら――その空気は、全ての生きるモノを凍えさせるような、圧迫感を放っていた。 どちらも、最高位のサーヴァント。 だが――『あなた』のサーヴァント、ではない。 「私は『管理者』の役目をムーンセルから任されたサーヴァント――“白”のルーラーです」 「同じく、“黒”のルーラーだ」 ルーラー。裁定者の英霊。 聖杯戦争を管理する審判者―― だが、それが二人存在するとはどういうことか。 「それについても、あなたに話しておくべきことがあります」 「率直に言おう。今回の聖杯戦争には異常事態が発生した」 ――異常事態。 おそらく、ルーラーが二人も存在する理由に起因するものだろうが―― 「月の聖杯――ムーンセルは地球、その事象の全てを監視し、記録しています」 「そう。全てを記録し、今回の聖杯戦争に当たってそれをムーンセル内部に再現した。 ――それがよくなかった。今回ムーンセルに記録されていた情報の中には、“地球の聖杯”が含まれていた」 地球の聖杯? と問いかけたあなたに、白のルーラーは話を続ける。 「冬木の聖杯戦争、その聖杯です――あなたが知っているかは知りませんが。 ムーンセルは記録してしまったそれを再現しようとしました。その結果――」 「ムーンセルに、“月の聖杯”と“地上の聖杯”が同時に存在する事態が発生した」 それだけなら単にお得、にも思えるが――ことはそう単純ではないようだ。 そもそもここはムーンセルのリソースを使って再現された空間。そこに冬木の聖杯が顕現したということは―― 「冬木の聖杯はムーンセルのリソースを大量に消費して、再現された冬木に居座っています。 ――いえ、そればかりか、月の聖杯の代わりに願望機として成り代わろうとしてさえしている」 「ゆえに月の聖杯は地上の聖杯を排除しようとし、地上の聖杯はそれを妨げようとした。 ――どちらも、サーヴァントを召喚してな。 この聖杯戦争は、月の聖杯と地上の聖杯の代理戦争だ」 ――なるほど、合点がいった。 ルーラーが二人存在している理由――それは月と地上の聖杯、それぞれがルーラーを呼び出した故か。 「その通りです。 ――誤解があってはいけないので先に説明しますが、私たちがどちらの陣営に肩入れするようなことはありません」 「我々の使命はあくまで聖杯戦争の管理だ。 ルール違反の処罰以外で、恣意的に戦争に干渉することはない」 “白”の陣営と、“黒”の陣営の聖杯大戦。 そこに管理役が積極的に干渉することはない、ということだろう。 「勝利した陣営には、通常通り聖杯の所有権が与えられる。 ――とはいえ、聖杯が一つしかないことは留意すべきだろうがな」 黒のルーラーは、そう『あなた』を挑発するように宣告する。 そう。聖杯は万能の願望機――どちらかの陣営が勝利したとして、その後それを争ってまた戦争が起きないとは限らない。 故に、敵陣営だけではなく、味方陣営も潜在的な敵となり得る。 それがこの聖杯大戦の本質か。 「個人的には、そのようなことはあって欲しくありませんが――」 白のルーラーは、そこで言葉を切った。 それ以上は自分の言うべきことではない、と理解しているからだろうか。 「貴方を歓迎します、新たなマスター。 ――この戦いで、あなたが答えを見つけられますよう」 代わりにそう言って。 ――白のルーラーは、黒のルーラーと共に身を翻し闇の中へと消えていった。 そして『あなた』は、その場に一人取り残された――いや。 もう一人。『あなた』の傍らに、立つ者の気配がする。 それは人類の枠を越えた存在。逸話に語られ、認められた者。 過去・現在・未来――あるいは平行世界においてムーンセルに記録された者。 ――サーヴァント。 これより『あなた』は、月と地球――その二つの陣営が争う聖杯大戦へと、足を踏み入れるのだ。 そう。 奇跡を欲するならば、汝。自らの力を以て、最強を証明せよ。
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『東』――0218、新都 停電により本来の夜の帳が降りた冬木市で明かりを発するものは僅かしかいない。自衛隊か、警察か、救急か、消防か。およそこの四者の公的機関のみがそれぞれに光源を用いて活動している。山向こうの島の反対側と海向こうの神戸の夜景により全くの闇に落ちたというわけでは無論ないが、それでも普段の夜空より少しだけ星が近い、そんな夜だ。だから街をゆく人の何人かは、そこに流星のように煌めく1つの飛行物体を認めたかもしれない。 それは、まるで灰色の天使であった。蝶のような翼と異形の脚部から戦闘機のそれのように炎を発し西へ西へと飛んでいく。実のところそれには遠方の妖力を感知するレーダーのような機能があるためますます戦闘機に近い。そして戦闘機がレーダーで捉えるものとはつまりは敵である。 初めにそれに気づいたのは、一人の吸血鬼であった。建物の最高点より常に高度を下げ低空で侵攻するそれは、彼が常人離れした視力で目視した時点で数百メートルまで迫る。そしてすぐさま声を上げた彼の前で、それは姿を変えた。 蝶のような翼の一部が分離する。その後部には赤々と燃える炎がそれに推力を与え、四方八方へと散った。そして臨戦態勢をとる吸血鬼達の前へ三次元的な機動で迫る。あるそれは瞬く間に高度を上げ、あるそれはビルの間を縫い、あるそれはアスファルトの数センチ上を突き進む。だが共通しているのはそれが全て吸血鬼達目掛けて放たれていることである。 「Mein Gott……」 それらを追い越すように炎を蒸かして通り過ぎていった侵入者に首を撥ね飛ばされながら、吸血鬼は自分に爆炎が迫るのを見届けた。 「撃て!撃ちまくれ!」 「配置に着け、寄せ付けるな!」 指揮官たるライダー・少佐を失った最後の大隊残党約四百人が展開するは、新都西部にある廃ビルであった。再開発初期に建てられたそれは、地下の共同溝を通じて同様の建物に繋がる。それを連絡線として利用できることは日光を浴びれば死ぬしかない彼らにとっては重大な戦略上の価値を持つものだ。未だ再編成の整わぬ彼らからすれば、ここを落とされれば軍隊としての体を保つことが非常に困難となる、まさしく最後の砦である。だがもはやそこは餌の小魚がバラ撒かれた鮫の水槽の如き状況になりつつあった。 廃ビルと同様に共同溝で繋がる付近のビルには、吸血鬼がそれぞれ展開している。NPCへの露見があるため特に息を潜めていた彼らだが、先の爆撃で全員が抹殺されていた。爆発自体は大したものではなく至近弾でなければどうというものではないはずであったにもかかわらずだ。恐ろしくピンポイントな精密爆撃により、砦の警戒線は一瞬で崩壊したことになる。こんな攻撃はあのアーカードでもやってこないだろう。 そして廃ビルというのが吸血鬼達を追い詰めていた。彼らはサーヴァントとはいえ、使用するのは通常の火器である。コンクリを撃ち抜く程の威力はないし、それができるものは先程沈黙した警戒線に配備されていた。壁抜きによる同士討ちを警戒してのものだが、それにより侵入者には有効な攻撃手段を欠いていたのだ。となれば、後に残るのは一方的な虐殺である。 「化物が……!」 弾切れをおこしたピストルを捨てスコップで殴りかかった吸血鬼達が瞬きする間に細切れになる。そもそも、銃弾が当たらないのだ。有効な手立てなどあるはずもない。仕掛けた地雷は身体から発射される小型ロケットで爆破処理され、人力による奇襲は奇襲にもならず返り討ちにあう。となるとバリケードを築くこととなるのだが、それも強引に切り裂かれ、あるいは爆破される。 そしてもう一つ、厄介な点がある。吸血鬼にも引けを取らない再生力、それが吸血鬼達を追い詰めていた。侵入者にまぐれで跳弾が掠めようとも、数秒後には何事も無かったのように傷は消えている。まるで不死身の化物だ。 「……」 侵入者は既にこのフロアに誰もいないのを認めると床を切り裂き階下へと降りる。そのぼうとした顔には想像もつかぬスピードでそれは侵攻を再開した。 「壁を補強!」 「軽機関銃用意!」 「鉄条網展開!」 「中尉!地上階との連絡が途絶えました!」 「んなこたわかってんだよっ!装備の梱包とっとと解け!V1より弾丸優先しろ弾丸ァ!!」 建物に魔力を這わせながら指示を下すゾーリン・ブリッツ中尉の顔を汗が流れに流れる。最後の大隊残党はこの聖杯戦争始まって以来の苦境に立たされていた。その原因は、つい数分前に会敵した白い侵入者。 「吸血鬼を喰ってやがる……ロクなもんじゃねえなありゃ。」 建物に産み出した眼が捉えるのは、化物(フリークス)。海軍士官が中心とはいえ仮にも吸血鬼を、まるで吸血鬼が人間にするように殺し喰らう。肉を斬り、骨を絶ち、銃を砕き、弾丸を消し飛ばし、爆風を刻み、建物ごと微塵にする。その剣戟に生やした眼を切り裂かれ、ゾーリンの顔には更に苦み走った。 恐らく東部の方角から襲撃してきた侵入者、その正体は吸血鬼達には全くの未知であった。せいぜい、それがサーヴァントであるという予想しかない。それもあんなマスターがいてたまるかという理由でだ。そして彼らが既知であるはずもない。そもそもそんなサーヴァントは存在しない。つい少し前に産まれ落ちた新しいサーヴァントなのだ。 ではなぜそれが吸血鬼達を襲ったのか。怨恨、というわけではない。もっと単純なことだ。『魔力不足を解消する』、ただそれだけ。そのために魂喰をしようとし、吸血鬼という格好の餌を見つけ襲うなど、喰う側の吸血鬼としては想像できるものではなかった。そんなことまで対応できるのは、それこそ根っからの戦争狂で根っからの指揮官の人間でなければありえない。 しかしながら、ゾーリンに教授達のような知識があれば、その正体の一端に触れることは十分可能であった。とりわけその化物の周りを飛び爆発する蝶など、一目見ればパピヨンの核金によるものであると察するに難くない。もっとも、彼女にはそんな知識はないので結局はありえもしないもしもの話なのだが。 建物に眼を次々と産み出して、ゾーリンはサーヴァントを補足し続ける。このサーヴァントは屋上から下へ下へ、ワンフロアごとに吸血鬼を食い散らかしながら進撃してくる。そしてついに、本陣である地下へのバリケードをぶった斬ると蝶がロケットのように突っ込み破壊した。もはや後は無い。『切り札』の発射までまだ時間がかかる以上、手は選んでいられなかった。 「おい死神、准尉に伝えとけ。例の兵器を使うってな。」 「僕はここだよ。そっちは任せるから発射準備を整えてって。」 「はいよ……で、死神。お前も出ろよ。」 「……」 直ぐに消えた准尉から目を離すと、ゾーリンは死神と呼んだ男、ウォルターを睨めつけた。無言で睨み返す彼と睨み合うこと数秒、背を向けて歩き出す。そしておもむろに鎌を振り上げると、コンクリートへと叩きつけた。 「日野茜が命ずる、ランサー、真田幸村、あの灰色のサーヴァントを殺せ。」 砕け飛ぶコンクリ片を一顧だにせず、ゾーリンは埋められていた男、真田幸村にそう命じる。幸村の目が苦悶の色を示すが、それでも彼は大人しく従うしかなかった。 これぞ最後の大隊が有する、数少ない使い捨てできる決戦兵器、『真田幸村』である。日野茜に強制的に使わせた令呪、『日野茜と名乗るものの命令を決死の覚悟で実現せよ』の効果により、幸村は自らを日野茜と名乗った人物の命令には逆らえない。それがたとえ日野茜でないと頭ではわかっていてもだ。そしてこの令呪のみそは、命令する人間を選ばず従えることだ。たとえゾーリンに何らかのことがあっても、第二第三の『自称日野茜』はいくらでもいる。また誰彼構わず言うことを聞かないように、日野茜と自称しなくてはならないという最低限のセキュリティもある。そして彼が戦うための魔力は、本物の日野茜が負担するのだ。これほど使い勝手の良い兵器はない。 幸村は、フラフラと立ち上がりながらも目はサーヴァントへと向いていた。彼が令呪に逆らおうとすればそれだけ魔力を消費する。故に彼は、心では反抗しようとも身体で反抗するわけにはいかない。そんなことをすれば、茜がもたないだろう。 「ぐうっ……動くな我が身体!こんな、こんな無体で……!」 「無駄だ、日野茜が命じたんだ。主命を裏切るわけにはいかないよな?」 「ぬう、うぅぅ、なああああっっ!!」 慟哭する幸村の身体は、勝手に謎のサーヴァントへと向かっていく。既にその手に槍は無い。ただ無手で、吸血鬼達を斬り喰らうそれへ向かい殺到する。それを幸村の意思が変えることはできない。変えてはいけない。 だが、幸村は二点だけ安堵していた。一つは、自らが無手であること。このような不本意極まりない戦いで槍を汚すのであれば、いっそ武器を持たぬ方がよほど良い。相手を傷つけることも、茜への魔力の負担も減るのだから。そしてもう一つは、茜がまだ生きていること。自分の実体化が可能なうちは、茜の生存は確実と言えるのだから。 彼の背後から伸びる鋼線が謎のサーヴァントを牽制する。死神と呼ばれた男、ウォルター・C・ドルネーズが操る異形とも呼べるその縦横無尽な動きは、しかし異様とも呼べる勘と身のこなしでいなされる。だがその拮抗が幸村が間合いに踏み込むための足掛かりとなり、肉薄を可能とするのだ。 小型ロケットを防御ではなく前へ踏み込みながら回避することでサーヴァントへと迫る。自分がダメージを負うということは即ち茜がダメージを追うことであると自身に厳命する。だが、こんなにも困難な戦いであるにもかかわらず、もしこれが自らの望む戦いであればと、幸村はそう思わずにはいられなかった。このような強敵、特にその鮮烈な動きは、初めに戦ったサーヴァントであるチョコのセイバーを思い出させるものだ。思えば、彼女には負け越している。あのカルナ相手の辛勝も、彼女がいなければ不可能であっただろう。かの軍神を思わせるその声と動きは、越えたいとその心を熱くさせるものであり、このような不本意な戦いで終わらねばならないことが惜しいと、この頃に及んでも感じざるをえないものだ。 「中尉、撃ちますか?」 「無駄だ、アレはそんなもんじゃ死なねえ。V1を急がせろ。」 「は!後は最後の調停の確認のみです。」 今この場では、吸血鬼達は手を出さない。この二対一で戦いを終わらせる必要が、幸村にはある。勝つにせよ負けるにせよ、茜が死ねば意味はない。そう噛み締めて心を滾らせ、しかし努めて炎を発さぬよう慎重に戦う。 幸村の下段をワンステップでサーヴァントは躱すと、ウォルターの鋼線を仰け反って回避し、その勢いで腕を幸村に叩きつけんと振るう。それを幸村は転がりながら躱すと再びサーヴァントへの肉薄を試みた。魔力放出を伴わない幸村の行動は、明らかにサーヴァントより見劣りするものだ。だがそれで終わらせねば意味がない。 鋼線がサーヴァントの指を取る、それに呼応して幸村はその指へと回し蹴りを放つ。爆破で足が吹き飛ぶ。千切れるより早く引き戻しその勢いを利用して、幸村は後ろ回し蹴りを腹部へと叩き込んだ。 (崩れたっ!) 回転の勢いのまま幸村の拳がサーヴァントに迫る。身体からバーニアのように炎を吹かして身を攀じるサーヴァントを鋼線が絡め取ろうとし、今度は変形した斬馬刀のような両腕に防がれる。しかし、それでガードは開いた。突き上げるのはアッパー、狙うは顎、顔が見える、額が迫った。 「……せいばぁ、殿?」 砕ける相手の頭蓋骨と自分の拳のことを忘れて数瞬、幸村はその変わり果てた相手の顔に釘付けになった。 「……誰だっけ?」 「せいばぁ殿!なぜかようなことを!?それになぜらんさぁ殿の服を!」 「セイバー……ああ、セイバー!そうかセイバーか、ハハッ。」 「一体、何が……」 地上で互いに拳と異形の腕とのラッシュを繰り出しながら、幸村とサーヴァントは会話する。そのラッシュは幸村には見覚えのあるものだ。あのカルナとの戦いのときに振るわれた剣舞、それが形を変えどもそこにある。暴風のようでありながら制御された槍衾。ならば彼女は紛れもなくあのチョコのセイバーであるはずなのだ。あんなことができる存在を幸村は他に知らない。たとえその首にまるで切り落としたものを嗣いだような痕があっても、だ。 「……貴殿、何者だ!せいばぁ殿なのか!?その身体はいおり殿のらんさぁの、蝶は狂介殿のきゃすたぁのものか!!」 「あー……ああ、そうか、うん、幸村、そうなんだよ。」 「何があったの、ぐおおっ!?」 「あ、悪い、殴っちゃった。まあ後で話すから少し寝てろ。」 尖った腕の斬撃が幸村を弾き飛ばすと、返す刀で鋼線を迎え撃つ。浅く斬られた傷を直ぐに回復しながらウォルターとの戦いに入ったサーヴァントを、幸村はよろよろと立ち上がりながら追った。ただ立っているだけでもふらつく現状、たった一発攻撃を受けただけでもはや実体化が難しいレベルのダメージだ。たが、彼女をこのまま戦わせておくわけにはいかない。それは彼女のためにも、茜への負担を減らすためにもだ。素早く戦闘を終わらせねば、自身の炎が茜の命を燃やし尽くしてしまう。 「っ!寝てろって言ったろ。」 「せいばぁ殿!なぜ彼らを喰らう!なぜ……」 「腹が痛いんだ。スゴく、凄くな。でもこいつらを喰うと少しだけ治まるんだぁ――よ!」 「ぐ、うおお!?」 「……まるで喰種だな。」 「なんだお前、喋れたのか。」 「人を化物扱いするな。」 幸村の蹴りは届かず、逆に蹴り飛ばされる。その隙にウォルターが操る鋼線がサーヴァントの指を半ばまで切断したかと思えば、数秒と経たずに再生が終わる。お返しとばかりに振るう文字通りの手刀を鋼線を編んで作った壁に阻まれると、その裏からロケットのように飛んだ蝶がウォルターの首元へと突き刺さった。 「……おっかしいなあ、顔半分、はなくても下あご吹き飛ばしたのに生きてる。」 「俺もお前もとっくに人間なんてやめてるんだ、今更だろ。」 「そうだな、そのとおりだ。だからこうして仲良く殺しあってんだ。」 微笑を浮かべながら言い終わると、サーヴァントの姿が滲む。ウォルターの足元から背面上部、背面下部へと流氷のような動きで現れた彼女の手刀を攻防一体の鋼線で迎撃するウォルターの顔が些か若返っていることに、幸村は気づいた。それがなにを意味するのかはわからない。そんなことを考えるより先に自身の身体が否応もなく彼女の元へと走ってしまう。だから幸村は走りながら考えた。 「某は……俺はッ!!!」 そして初めて、幸村は、この戦闘で。 「……なんの真似だ。」 「強引だな……」 幸村自身の意志で行動した。 右手には手刀を受け止め、かつ両手で鋼線を掴み取る。幸村は二人の間に身を割り込ませ戦闘を停めるべく行動したのだ。 それは、幸村がサーヴァントを倒す為の行動であった。そう幸村は自身に言い聞かせた。でなければそんな行動は許可されない。最大限自身を譲歩させられる一線であった。 深く息を吐く。深く息を吸う。もはや実体化をいつまで維持できるかわからないなか、溜めて数秒、幸村は大音声を発した。 「せいばぁ殿とお見受けする!このらんさぁ真田源次郎幸村!!貴殿に、一騎打ちを申し込み候!!!」 そう叫ぶと、幸村は革ジャンを彼女に向かって放り、拳を構える。そのファイティングポーズにはいささかの隙もない。 「某、さる事情にて貴殿を討たねばならぬ!この『楯無の鎧』はその前金!武田家秘伝の家宝!某を討ったあとは好きにするが良い!!」 サーヴァントは変わらぬ微笑を浮かべ、無言でウォルターは後退し、ゾーリンは不愉快そうに睨み、吸血鬼達はある者はV1の準備を進めある者は銃口を油断なく三人に合わせる。彼らからすれば幸村もウォルターも危険な存在だ。だが幸村にはそんなことは関係ない。先程までの争乱が嘘のように静まり返ったビルで、幸村は続けて叫んだ。 「そして、某が勝利した暁には貴殿を某が全力で弔おう!さあせいばぁ!!互いの全てを賭けたこの一騎打ち、応じるのであれば前金を受け取れぇぃ!!」 「――応じよう。」 隙を見て狙撃しようとした吸血鬼の銃口に、火薬でできた蝶が停まる。ゾーリンは目配せして銃を下げさせた。死角からの攻撃の準備を進める相手をピンポイントで牽制できる相手に、そんなものは用をなさない。それよりは、少しでも時間を稼ぐべきだ。なぜならあと少しで冬木市を地獄に変えられる最終兵器が使えるようになるのだから。 デウス・エクス・マキナとグラーフ・ツェペリン、二隻の装甲飛行船に本来なら装備されていたV1ミサイル。弾頭にVXガスなどの化学兵器を備えることが可能なそれは、まさに戦術ミサイルである。地上で撃つはずのものを空中から撃てるように改造したものを地上から発射するというしちめんどくさいことをしなくてはいけないために準備に時間がかかっているが、使用可能になればパワーバランスを大きく変えることができる代物だ。カルナの爆撃もありホテルから持ち出せたのは僅かに六発だが、その存在は切り札となり得る。それもあと数分以内に現実化するのだ。そうなればあとは天井を壊せばいつでも撃てるのだ。おあつらえ向きにあのサーヴァントが壊しに壊してくれた。あれならばゾーリン単独でも数秒で蓋を開けられるであろう。 緊張が高まる。幸村とサーヴァントは互いに十メートル程の距離をとって向かい合った。サーヴァントは軽やかなスタンディング、幸村は消えかけた手を地面につきクラウチングスタートめいた前傾姿勢で。サーヴァントがスカート近くの外骨格をブースターのような形に変形させて蝶を集め、幸村は殆ど無くなった足の裏に炎を滾らせる。 そして、小さな爆発が起こった。 「――見事だ、せいばぁ。」 「お前……!」 「某は……決死で!死力を尽くし戦った!某が望んだ形で!!互いに万全の状態で!!戦い敗れたァッ!!!そうだろう!!!」 「……ああ、そうだ。公正な決闘で私はお前に勝った。英霊にとってこんなんにも栄誉な事は無い。お前と戦えたことを感謝する。」 「そうだっ!某は!恥じることなく死んでゆく!お館様にも!我が親父殿にも!ますたぁである茜殿にも何者にも!!」 幸村の背中に銃弾が突き刺さる。鎧を捨てた彼には、もはやそんなものでも致命傷を避けられない。そしてその傷の事実とやり遂げたような満足気な笑みが、ゾーリンの癪に障りに障った。 「何が一騎打ちだ!自分からアイツの槍に飛び込みやがって!死神ィ!天井ごと殺せェ!」 吸血鬼の弾丸が幸村に殺到する。ウォルターの鋼線が天井とサーヴァントへ迫る。そしてゾーリンは、いつの間にか傍らにいた准尉にV1発射の指示を下した。 幸村の自決はゾーリンにとって想定外のものであった。ここであのサーヴァントに勝てばそれで良し、負けてもそれで良し、戦っている最中に魔力切れで死んでも良し、そう考えていた。どう転んでも損はないと。 だがゾーリンは見誤っていた。幸村という男の知略を。ただの田舎騎士と思い、ドン・キホーテのような人間だと思い込んだ。マスターになるべく負担をかけないために早急に死に、しかも予想より遥かに有用な装備を、よりによって敵にまで渡すとは考えもしなかった。 サーヴァントはバーニアのように火薬を推進力に変え、ポッカリと開いた天井から飛行し鋼線から逃れる。その目には、追い縋るウォルターと、銃弾の雨に晒されて不格好なダンスを踊る幸村と、いったいどこに隠していたのかわからないミサイルのようなものが上を向いていくのが見えた。不思議と、それにもう飢餓感は無い。そもそもそれが空腹という感覚であることを思い出したのがつい先程のことなのだが、それでも悪い感じはしなかった。不思議と言えばもう一つ、なぜか身体が鋼線に切断されなくなった。その変化を利用してぶら下がってくるウォルターは考えものだが、ダメージを気にしなくて良いようになったのだ、気にせず高度を上げる。そして、サーヴァントは光を見た。 (あの光――) 川の対岸、学校らしき建物のある辺りで光と爆煙が上がっている。触れたもの全てを有象無象の区別なく一切合切消し飛ばしたかのように、そこにはクレーターが現れ、近くの学校は瓦礫と化していた。まるで消しゴムで丸く消したようにきれいに灰燼に帰している。そしてその下手人の姿を見て、サーヴァントは駆け出した。 『西』――0221、深山町クレーター北部 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンのランサー、カルナがその魔力の波を感じ取ったのは、クレーターを挟んで南から迫ったサーヴァント達と睨み合いを続けていた時のことだ。残る片目で和装のアーチャーを見れば、そこから不自然なほどに垂れ流される魔力が見て取れるかのよう。だがしかし、カルナを以ってしても害意を感じられない。その行動を図りかねる。カルナがそのアーチャーの不審な行動を理解したのは、頭の中に微弱なノイズが聞こえてくるようになってからのことであった。 『ランサーさん、今念話を……してませんよね?』 『ああ。そちらにも聞こえているか。』 『ええ、壊れたラジオみたいな……いや、声?女性の声ですね。』 『あのアーチャーの企みだろう。どうする。』 『……様子を見ましょう。』 『承知した。』 ノイズはより大きくより鮮明になる。それにつれてアーチャーから流れる魔力にも細かな変化が起こる。徐々に波長が変わっていくのだ。次第に聞こえてくるその音は数字を告げる声となり、やがて明瞭な女性の音声へとなった。 『こちらは、聖杯戦争始まりの御三家が筆頭、間桐家の家長、間桐慎二による間桐邸の同盟です。聖杯戦争に参加する全ての方に呼びかけます。我々は、この聖杯戦争の平和的解決、各位の対等の交際、並びにこの呼びかけに賛同される方が侵略を受けた場合の参戦義務を伴った共闘を提案します。この間桐三原則に関してご質問がございましたら、お気軽にお電話下さい。電話番号は――』 仰々しく共闘を呼び掛ける前半とうってかわってセールスのような電話番号を告げる後半。念話はそれを繰り返えしアナウンスしていた。 『始まりの御三家……?あの間桐ですか?』 多分に疑念を含んだルビーの声と同時にループされる女の声。状況は不明瞭だが、停戦を名目にした呼びかけということには間違いないとカルナは判断する。であればその判断はマスターであるイリヤが下すべきこと、自分はただここで備えるのみ――そう考えていたところに、またもノイズが走る。アーチャーからの放送が始まって数分と経たぬ間に、同様の手段で放送を行う者がいるとすぐに――それこそアーチャーより先に気づいた。膠着状態を破ってにわかに動き出した戦火を交えない戦況の変化。それをカルナはただただ柳のように柔らかに受け止め続けようとして。 『シンジ、あまり適当なこと言わないでもらえる?いつから貴方が御三家の代表になったの?』 マスターではないイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの声を認めて、わずかに眉根を寄せた。 『……アインツベルンさん、間桐さんからの言伝です。復唱します。「お前スマホ持ってんだから電話しろよ」とのことです。』 『あら?私のことイリヤだって思ってるわけ?まあ間違いじゃないんだけどさ……はじめまして、私はクロエ・フォン・アインツベルン。貴方達風に言うと、始まりの御三家筆頭のアインツベルン家の魔術師ってところかしら。』 『……』 クロエと名乗ったイリヤとうり二つの魔力の持ち主。広域に人を選ばず飛ばせる念話が可能な人間のうち、カルナに心当たりのある人間は一人しかいない。だが、その人物ではありえない。この感じは明らかに彼女、美遊・エーデルフェルトとは違う。魔力が違う以上、カルナにそれが何者であるかはわからなかった。 『アインツベルン……すっかり衰退したって聞いてましたが――ああっ!?イリヤさん!?』 『ランサーさん!この声がどこから来てるかわかる!?』 『山の近くの学校の辺りだ。』 『ルビー、視界共有お願い。』 イリヤの望みを察し、カルナの残る右目が南へと向く。闇に沈んだこの冬木で数少ない光源を有する穂群原学園の近くに、その二人はいた。 一人は、まるっきりイリヤと瓜ふたつな人物。カルナの視力を以てしてもイリヤとの差異を見出すのは難しい。そしてもう一人は、肌と髪の色と魔力だけが違う人物。今念話で放送している『クロエ』と名乗ったのはこちらだろう。そしてなによりその人物の不審な点は、それがサーヴァントだということである。 『見つけた、あれがリンさんを……』 念話越しにカルナの脳内に聞こえるのは、マスターであるイリヤの震えた声。それに込められた感情は今更説明するものでもない。 『リンさんを殺したもう一人の私!!』 予選の間で彼女の師である遠坂凛を抹殺した、『もう一人のイリヤ』その人。彼女の存在を知ったイリヤがどう動くかなど想像に難くない。大方直ぐにでも家を飛び出して向かおうとするだろう。ならばカルナのすることはそれを邪魔立てする障害を排すること。 イリヤの家の上空を飛び回る小さな飛行機にも、それを操るあのアーチャーにも依然動きはない。それだけでなく、南のサーヴァント達は放送が始まってから僅かだが緊張を解いている。故に今は動かない。だから、彼が動く理由はマスターが動くからだ。 『ルビー、ランサーさん、私あのマトウって人と話そうと思う。』 『……ものすごく嫌な予感しかしないんですが、このままだとニセイリヤとの間で話が進んじゃいそうですし、やるしかないみたいですね。ランサーさん?』 『オレに異論はない。もし奴らが虚飾や詭弁を述べたならばすぐさま伝えよう。』 『ありがとう……よし!ランサーさん、今戻ってこれる?電話するから一緒に聞いてほしい。』 『了解した。』 『拮抗状態を崩すのはちょっと怖いですけど、まあもう壊れてるようなもんですし、ドーンと行きますか!』 頭に様々な念話が響く中、カルナは注意深く後退を開始する。どの道マスターの居場所は割れているのだ、相手を刺激することを除いては撤退のデメリットは薄かった。 「ただいま戻った。」 「お帰りな……え。」 「うーん、まあ、そうですねぇ、ちょっとよくわかんないです……」 「ランサーさんその怪我……ルビー、もしかして黙ってたんじゃ……」 「ランサーさんそんな怪我してたんですかー、知らなかったー。」 「かすり傷だ。」 「じゃあ大丈夫ですね。ほんじゃランサーさんも戻って来ましたしお電話しましょ。」 「ちょっ、ルビー!!」 玄関前で出立の準備を調えながら電話の子機を持って待っていたイリヤの前に、空から現れる。やはり怪我に驚かれるが、勢いでルビーが誤魔化すのをカルナは黙して認めた。常識的に考えれば大怪我も良いところであり、とてもではないが治癒に専念すべき場面であろう。だがそれでも、いやだからこそ、ここはあの先の呼びかけに応じるべきであるとカルナは判断する。そして目の前の杖もそう判断すると踏む。そしてイリヤも、結局はそれに折れると、自らの師を殺した紛い者を討つことを選ぶと踏む。 「でも、身体が半分に……」 「この深手ならば彼らも大袈裟に恐れはしないであろう。それにまだ片手片足に頭と心臓がある。」 「今からおはなしするってことを考えればちょうど良いハンデですね。」 「いやいやおかしいでしょ!いつ死んでもおかしくないんじゃ……」 「心外だな。まさか我が万に一つでも負けると思うか。」 「そうですよイリヤさん、カルナさんの宝具なら地球の表面ごと冬木市削ってコールド勝ちですよ。」 「なんてことを……!」 そしてこのような状態であろうと勝利することは可能であると。 カルナ第四の宝具、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』による『冬木市全体への同時無差別爆撃』。この島ごと地図から消し飛ばすことができる最大の切り札がカルナにはある。そしてそのために必要な『コスト』もカルナの手の届くところにある。必要ならばそれを振るうことに、心痛めども躊躇は無い。 「……あーもう!よし、行きます!」 イリヤは頭を振ると電話のボタンをプッシュした。 『西』――0222、間桐邸 『こちらは、聖杯戦争始まりの御三家が筆頭、間桐家の家長、間桐慎二による間桐邸の同盟です。聖杯戦争に参加する全ての方に呼びかけます――』 「やればできたわ。」 「いいねえ。」 間桐邸の地下、そこに詰めるマスター達がアリスの言葉と彼女のアーチャーの念話を聞いて息をつく。一番意気込んでいた慎二が前傾姿勢になるのを見て、のび太も深く息を吐きながら眼鏡を拭いた。 アリスのアーチャーが呼びかける内容の草案作りからそれの放送実行までわずか数分。勢いだよりの突貫工事もいいところの聖杯戦争打破の呼びかけはなにはともあれ始まった。そのことがのび太達対聖杯の人間にとっては非常に重要である。 直接的な表現こそしていない――状況の変化についていけなかったクロノが『必勝法』に触れないよう穏健な草案を例示したらそのまま放送することにしたためだ――が、公然と停戦を呼びかけるというのは、聖杯戦争の意義に真っ向から反抗することだ。スポーツで言えば無気力試合である。それをルーラーがいないのを良いことに、タイムをとる体で提案している。主催側が直ぐに動く可能性は低いが、充分に警戒されうる行為であろう。故にこれから先は一切を電撃的に進めなくてはならない。それもほぼノープランに近い現状でだ。しかし、なんであれ企てが動き出したことそれ自体がまず対聖杯派を安堵させる。この同盟内だけでもある程度リスキーな行動をともにできるだけはまとまれたということなのだから。 (マズイ、いつの間にかカルナと停戦する流れになってる。いや、それそのものはいいんだけど……こんな放送して同盟が肥大化したら、聖杯戦争が成り立たなくなる……!こいつらわかってやってんの?) (とりあえずこれでイリヤが襲われる可能性は減った。でもこのままじゃイリヤと会うことになる……万が一のことを考えてバーサーカーを呼び戻しておかないと……) ……実際はただ単に聖杯狙いの人間である遠坂凛と美遊・エーデルフェルトが、サーヴァントの撤退を呼びかけた手前、表立って反対できずにズルズルと引きづられてしまっただけなのだが。 「狂介さん、どうなると思う?」 「……成功するって信じてる、って言ったら嘘になるけど、でも、けっこうなんとかなる気がする。パピヨン達が命懸けで止めたんだ、あっちもかなりダメージは大きいはずさ。」 不安を感じ問うのび太に、狂介は率直に応えた。それを見て、のび太も頷く。もう始まってしまったのだ。成功しなくては困る。それは共にサーヴァントを失った二人にとってはひとしおだ。これがうまく行かなければ、二人の生存の可能性はゼロへと限りなく近づく。そしてなにより、二人の目的が果たせなくなる。無手となったマスターにできることは限らているのだ、今だって祈ることぐらいしかろくにできない。だがそれでもできることはやる、それは二人の共通の考えであった。 『――シンジ、あまり適当なこと言わないでもらえる?いつから貴方が御三家の代表になったの?』 「念話!?しかもこの声、イリヤか!」 頭の中に響く声、状況は変転する。 令呪の失くなった手を握る狂介を見ながら、のび太はつばを飲みこんだ。 「アイツやっぱり生きてたのか。」 「待って。少し様子がおかしい。」 「何言ってるんだよアリス、明らかにイリヤだろ。そうだ、『お前スマホ持ってんだから電話しろよ』、って念話で言ってやれ。」 「……わかったわ。」 しぶしぶといった感じでアリスは慎二に従う。だがもちろん、彼女はイリヤではない。その事実に一同が困惑する中、慎二のスマホへと掛かってきた一本の電話が更に混乱を招く。 『もしもし、間桐さん、ですか?』 「そうだけど、あれその声は……」 『あ、ゴホン!私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。ランサーの、マスターです。』 電話を介したスピーカーから聞こえる意外な人物の見知った声に、マスター達の間で困惑が広がった。 (イリヤ……!) そしてただ一人、美遊・エーデルフェルトは努めて無表情を造りながらも内心は焦燥にかられることとなる。ついに彼女が恐れる事態が現実味を帯びてきてしまったのだから。 美遊にとって、イリヤに自分の存在を知らせないことは至上命題である。まず全てはそれに優先される。優しいイリヤのことだ、自分がいると知れば必ず戦い抜く上で迷いを生じさせてしまう。イリヤを優勝させるには自分は邪魔なのだ。 だが問題はクロエも聖杯戦争に参加していることだ。この時点で、イリヤが優勝を目指すことは難しくなる。美遊がそうであるようにクロの存在もイリヤが勝ち抜こうと思うためには重大なマイナス要素だ。イリヤはまず親友や家族の生存を最優先に動いてしまうだろう。 『私達の提案はたった一つ。貴方達の提案に乗るから、深山町の遠坂邸での会談を申し込むわ。間桐邸からすぐだし、そっちには……遠坂家の当主がいるでしょ。そんなに難しい話じゃないと思うけど、どうする?』 「こっちの情報は漏れてるってことね……シンジ、一応私からそっちじゃないイリヤに電話してみるから。」 「わかった……あーもしもし、イリヤ、だな。知ってると思うけど、僕は間桐慎二。キャスターのマスターでこの同盟のリーダーさ。」 念話と電話、双方から聞こえるクロとイリヤの声。こちらに聞こえているように、イリヤもクロの念話を聞いているのだろう。だからこちらに電話してきた。そうに違いない。 『あ、どうも。それで――ん!それで、交渉したいの。もし私の条件を一つだけ飲んでくれるなら、貴方の条件を全部飲んでも構わない。』 「ダメね、出ない。」 『悪いけど、イリヤは電話に出る気は無いって。口約束じゃなくて証人がいないと、ねえ?それにカルナ、貴方達にも悪い話じゃないと思うけど、どう?』 「なあこれ今誰が喋ってるんだ?」 「念話の方が、多分バーサーカーの方のイリヤと一緒にいるクロエって名乗ってるイリヤ。で、電話の方がランサー・カルナの方のイリヤ。そうでしょクロノ。」 「ええ、おそらく。」 「ややこしいな……」 イリヤからクロへの通信手段のみ存在しない状況で、歪な三者の会合は進む。美遊は自分の耳が敏感になるのを感じた。隣に座るのび太が手を握り締める音さえうるさく感じる。一言たりとも聞き逃してはならないのだ、集中もする。ほぼ確実にここで、イリヤがどれだけ優勝に邁進できるかが決まるのだから。 「交換条件ってやつか。まあまず話してみてくれよ……アリス、『私達ってどういうことだ。まずマスターとサーヴァントが何人いるのか教えろ』って聞いてくれ。」 『……単刀直入に言うと、今念話してるアインツベルンの魔術師って人を倒すまで休戦してほしい。あの人は戦いを楽しんでる、危険なマスターなの!』 『……復唱します。「私達ってどういうことだ。まずマスターとサーヴァントが何人いるのか教えろ。」とのことです。』 『どっちも三人で三組よ。バーサーカー二人にアーチャー一人。で、どうするの?飲む?飲まない?まさか私達だけに手の内を晒させて自分達はダンマリってことなら……』 「イリヤ、アインツベルンって、今喋ってるコレのことだよな?」 『うん。ヘラクレスをバーサーカーのサーヴァントにしたマスターはかなり危ない。予選の時に……とにかくとんでもないマスターだから!』 『カルナ、提案があるんだけど、私達で同盟を組まない?貴方がそこでサーヴァントを抑えてる間にこっちが対軍宝具をマスターに撃ち込むわ。たぶん地下に立て篭ってるから、貴方も余裕があったら狙ってみて。』 『慎二さん、まずあのサーヴァントを倒さないと!アレには生半可な攻撃は効かない。普通に戦ったら絶対に勝てない。だから協力して!』 おかしい、美遊は思わずそう口にしそうになった。一連の会話を全て一言逃さず聞いたはずなのに、聴こえたはずの言葉で混乱する。なぜ『クロエ・フォン・アインツベルンを無視しているのか』、それが最大の疑問点であった。偽者のイリヤと間違えている、というのはありえない。慎二達ならともかく、声を聞けば区別はつく。ならなにか考えがあってのことなのか…… 「少し待て、いいな?」と言って慎二は苛立たしげにテーブルを指で叩きながらスマホを伏せる。そして前髪を一度かき上げてから全員を見回して言った。「どうする」と。 「ぶっちゃけると、カルナの方のイリヤが言ってることはあながち間違ってはいないかもしれない。僕と狂介、それとアリスがバーサーカーの方のイリヤと会ったとき、アイツは港でびしょ濡れの状態で気絶してた。だよなアリス?」 「ええ。まるで海で溺れたような有様だった。」 「で、その港っていうのは、あのポッキリ折れてる冬木大橋の近くだ。なんで折れたかって言うと、のび太だっけ?知ってるよな?」 「……うん。茜さんといおりちゃんが、別のバーサーカーを撃退したんだけど、そのあと銀髪で紫の服を着た女の子のバーサーカーに襲われたって。それで、戦ったんだけど茜さん達がやられて、その後いおりちゃんのランサーが戦ってたら、姿の見えないサーヴァントがその女の子と戦って、橋を爆破して倒したって聞いたんだ。」 「ていう感じで、バーサーカーの方のイリヤがヤバイって話もわかる。が、僕達はその証拠となるようなものは何一つ見ていない。これは間違いないことだ。この中に、あっちのイリヤが誰かと戦ってるところを見たことある奴がいるか?」 早口で話す慎二だが、その言いたいところはわかった。確かに、イリヤの言うことは信憑性があるだろう。だが偽者のイリヤを疑う決定的な証拠はない。それは美遊だけではなくここにいる全員がそうであるようで、全員が沈黙を守り続ける。それを認めて慎二は再び口を開いた。 「アイツと直接戦ったのは上でベッドで寝てるいつ死んでもおかしくない高遠と日野、それに死んだ九重だ。まあ、九重に関してはアイツのサーヴァント以外でアサシンぽいことができるサーヴァントがいないからあくまで消去法だけどな。とにかく何が言いたいかって言うと、ランサーの方のイリヤの話を信じる根拠がない。」 「慎二、イリヤに動きがあった。」 一息に慎二が喋り終わると間髪入れずにアリスが話す。「どっちだよ!」と苛立たしげに聞く彼に「両方」と彼女は淡々と答えた。 「カルナは東に移動を始めた。バーサーカー側から離れる動きね。それを追うようにバーサーカー達も動いてる……車が二台走り出した。たぶんアレね。」 「しびれを切らして動き出したか。アリスさん、念話の呼びかけを再開して下さい。なるべく引き伸ばしましょう。慎二さん。」 「……わかった、電話頼むぞ。もしもし、イリヤ?またせたな、今からクロノって奴に変わる。これからそっちとの交渉はソイツに任せることになったんだ。心配しないでくれ優秀な奴さ。今からクロノが電話をかけるから、一度切るよ。」 慎二のスマホの着信履歴を基にクロノは電話をかけ始め、アリスのアーチャー・赤城は再び念話を再開する。一瞬の停滞を破り状況は再び動き出した。もはや猶予は無い。そのことを美遊達に思い知らせるかのように、念話と電話からはそれぞれ先程より一段階トーンの落ちた声が聞こえた。 『シンジ、私をガッカリさせないで。そんなに難しいことを言っている気はないんだけど。貴方達の同盟の中で折り合いがつかないからって、それでレディの時間を奪うのはいただけないわ。』 『クロノさん、お願いします。』 「アリス!もっと引き延ばせよ!」 「貴方ならできるの?」 「ッ!?ク、クロノ!」 「イリヤさん、こちらも貴女の提案を前向きに考えています。まずはお互い時間が必要ですよね?」 『我々、間桐の同盟としてはお二方双方の事情を考慮しなくならてはならず――』 『お二方ってことは、カルナ側とも話してるってわけね。ところでカルナが変な方に走ってるんだけど……』 「アーリィースウゥー!!!」 「黙ってろワカメ。」 『……クロノさん、ランサーさんに時間があるように見える?』 「クロノ!!やっぱ電話代われ!!」 「慎二落ち着け!」 「マズイ……!このままじゃどっちも敵に回しかねない。クロノ私は――」 「行って、バーサーカー。」 口々に喋る声が地下に木霊するなか、美遊は決然と言った。 さてここで数個の変化が起こった。 まず地面が震動した。キャスターにより多少なりとも陣地化されたにもかかわらず地下の全員が揺れを感じた。 次に。音が聞こえた。それが地上階の窓ガラスの割れた音だということがはっきりとわかるほど、明瞭かつ大音量であった。 『なるほど、これが返事ってわけ――ね!』 「何の光ィ!?」 そしてクロの念話と教授の絶叫と共に、天井に亀裂が入り赤い閃光が漏れたのをマスター達は目にした。 「美遊、今何をしたのかについて、説明を求める。」 「このままだとどちらのイリヤとも敵対する。だから『イリヤのバーサーカー』だけを私のバーサーカーに襲わせた。」 「つまり、勝手にクロエ達を襲ったってことか?」 「そう。」 一気に険しい顔になったアリス達マスターを前に、美遊は冷静に自分が今何をしたのかを説明する。身を乗り出しながら詰め寄る慎二に対しても、非常に淡々と答える。 「ランサー達はバーサーカーを倒したい、バーサーカー達は会談の場所を凛さんの家にしたい。なら両方の条件を同時に飲むことはできる。」 「ふ、ふざけるなあぁっ!!」 続けて美遊の説明に慎二が激昂するのも受け止めながら彼女は転身し―― (鎖!?違う、縄!!) 「――どうしてなんだ。」 魔法少女となった自分の身体が亀甲縛りになっていることに気づいた。 それはのび太の隣に座っていた色丞狂介の早業である。美遊の凶行とサーヴァントに攻撃されたらしい事実に警戒を強めていた凛はもちろん、アリスやクロノといった超常の荒事への心得がある人間からしてもなお早いロープ捌き。それが瞬く間にわかりやすい魔法少女のような姿になった美遊の自由を奪っていたのだ。 「そんなことをすれば街の人だってただじゃ済まない。それに……」 「街の人間は所謂NPC、サーヴァントに近いデータ上の存在。それを守るために聖杯戦争を中断させるチャンスを失っては本末転倒。違う?」 「……それに、こんなことをすればバーサーカー達は話し合いどころじゃない。これじゃあ、あっちの三組と戦うことになるって、君だってわかるだろ!?そうなれば結局聖杯戦争は止められない!」 「いや、なる。むしろ今回のことで、バーサーカー達は貴方達と話し合おうとするはず。だから止められる。」 「そんなことがあるわけ――!?」 狂介は、この場で最も美遊の行動に憤っていた。彼女が人名を軽視したことも、仲間である自分達になんの相談も無かったのも、今回のことで会談が潰れることも、全てに憤っていた。そしてなにより、彼女のあり方から無理矢理に醸し出される悪の臭いが彼を総毛立たせていた。 それは直感である。このまま美遊を放っておけば、取り返しのつかないことが、さっき以上のことが起こる。そして狂介には、その直感により彼女が何をしようとしているのかもおおよその見当がついていた。ならば絶対に行かせてはいけない。それは絶対に彼女のためにならないんだから。 「美遊ちゃん、それはダメだ。それじゃ助からないじゃないか。」 「いいえ、これでみんな助かる。」 「そのみんなには君が入ってない!」 「――けっこう勘が良いんですね。」 美遊が身体から光を発すると共に叫ぶ狂介の手に持つ縄から抵抗が消える。一瞬で戒めを破砕した美遊の姿は、それを最後にかき消えた。 「クソ!」と叫びながら狂介は素早く階段を駆け上がり始める。「キョウスケ!こっちで追うから下がって!」と言いながらクロノがかき消える。後に残されたマスター達が立ち上がろうとしたところで、三度衝撃が来た。 「アリス、黒いバーサーカーに――」 「任せて、アーチャーがやってる。」 「な!?おい何なんだよ!?」 事態から取り残され混乱しきった顔で口から泡を飛ばし訊く慎二に、おずおずといった感じでのび太が答えた。 「美遊ちゃん、たぶん僕達の敵になる気です。そうすれば、さっきのことは僕達とは関係なくなるって……」 「待ってくれ、美遊ちゃん!」 『想像よりずっと早い。逃げることを優先し――』 『上です!クロノ・ハラオウン!』 「――風の剣!!」 半壊し焼け落ちた間桐邸から直線的な動きで屋外へと脱出した美遊は、後方から追いすがる狂介を引き離そうと足に込めた力を横向きのベクトルへと変換し、真上から迫るクロノから距離をとる。 「ストラグル!」 「サファイア。」 『危険です、回避を。』 続いて迫る鎖に防御姿勢を取ろうとしたのを寸でのところでキャンセルして、直進してくるそれを回避した。狂介のそれよりなお早い、だが、先程のような慢心がなければそう簡単には当たらない。相手が魔術師である以上、たとえその攻撃に殺意がこもっていなかろうと、美遊に遅れを取る気は無かった。 「ハァ……ハァ……美遊ちゃん!戻ろう!」 「ッ!?シールド!」 駆け寄ってきた狂介の背部から迫る矢をクロノが魔力の盾で往なして反らす。それを見て再び逃走を開始した美遊をクロノは苦み走った顔で見送るしかなかった。 (この方角、バーサーカーのイリヤ達からか。まず確実にアーチャーか。) クロノは冷静に魔弾を放つ者の正体を考えながらも、シールドを展開し続ける以外に行動を取らせてもらえないまま、次々と狂介めがけ飛来する矢をやり過ごす。防御に関しては人並み以上だと自負はあるが、それでもサーヴァント相手となれば不十分極まりない。魔力を湯水のように費やしてなんとか延命を図るのがやっとだ。 それもそのはず、クロノが相手取るのは『偽・偽・螺旋剣(カラドボルグIII)』。彼の読み通りアーチャーが放つそれ。フェイクのコピー品とはいえその威力は並大抵の魔術障壁など障子に穴を開けるが如く簡単に破壊する。それをクロノが防いでいるのは、彼の術の完成度の高さと魔力の多さ、そしてそれらを効果的に運用できる技術があるからだ。 『――こちらは現在の攻撃に関して一切無関係です。我々に敵対する意志はありません。』 『そんな言い訳通ると思ってん――の!』 赤城の念話にクロが悪態を念話で返すと同時に、矢が音速を超えて狂介へ飛来する。なるほどこれがさっき屋敷を吹き飛ばした攻撃か、とクロノは痛感しながらもなんとか念話を試みる。相手は、もちろん五代である。 『五代さん、そのまま全員撤退させてください。そしてギリギリまで反撃を控えてください。』 返信を聞く間もなくクロノは矢の対処に専念する。美遊の暴発が多数のサーヴァントが絡む本格的な衝突となるかはもはや間桐邸に残った人間次第になるがしかたがない。一度の念話が限界なほど、そして二度目の念話は無理だと判断せざるをえないほど、相手の狙いは正確だ。それもそうだろう、撃ってくるクロからすれば突然サーヴァントに襲われたのだ。状況を考えれば、カルナ側と間桐側が手を組んだと考える、そうでなくとも、大同盟相手に戦うことになったとなれば、なりふり構っていられない。 だがなにより、クロが狂介を狙い撃つのは、彼が美遊を追っていたからだ。ぶっちゃけクロにとってはそれだけが理由である。 当然であるが彼女は間桐邸の位置をイリヤ(もちろんバーサーカーの方だ)から聞いている。そうであるから間桐邸の方角から接近してきて攻撃してきたバーサーカーは間桐邸のものだと判断して、そこに牽制として矢を撃ち込んだのだ。彼女としては牽制打は伏兵によりまず確実に防がれると読んで相手がどうガードしてくるかを注視していたのだが、以外にも攻撃が成功してしまいしかもそこから親しい顔が逃げ出したとなればこれはもうとりあえず美遊を助けようと考えるのは至極当然のことである。 「申し訳無いクロノ君。君はここで足止めしてくれ。私は彼女を追う。」 「それはダメだ。今の貴方は――」 「イかせてくれ!」 「ダメだ!まず服を着るんだ!」 「これが私の正装だ!」 「頭にパンツを被ってなんでそんなに堂々としていられるんだ!!」 ましてや頭にパンツを被りほぼ全裸の男性に付きまとわれているのをみたら当然撃つだろう。 「いかん!だいぶ距離をとられたな……とう!」 「待って、逆効果だ――ぐうっ!?」 『女子小学生追い回す露出狂がいる同盟の何を信じろっていうの!』 最愛の人のパンティによる『脱衣(クロス・アウト)』。この聖杯戦争では命懸けの状況でしか使わなかったその切り札を、狂介は正義のために、自己犠牲を選んだ少女を救うために惜しげも無く使う。前回の脱衣から三時間と経っていない状況ではいつまで維持できるかもわからないそのギャンブルは、ものの見事に裏目に出ていた。 当たり前だが、狂介は変態である。現在の格好は女物のパンツを頭に被り、ブリーフをエイヤと引き延ばしてブラジル水着に近い着方にしている。どこをどう見ても不審者だ。そんな彼が体のラインが出る服を着た少女を深夜に追いかけ回している。百人に聞いても誰一人として正義の味方だとは思わないだろう。 「フオオォォォ!」 「美遊様、隣のビルです!」 「もう追いつかれた……!」 相当のスピードで走っていたにもかかわらず数分とせずに距離を詰められる。チラッと横を見てM字開脚しながらビルからビルへと飛び移り接近してくる狂介を目にして、美遊は脳で理解するより先に体が勝手に走るペースを上げていた。もともと美遊はイリヤとの接触を避けたい一心で同盟を抜けカルナの視界に入らぬよう遮蔽物伝いに遠くへ逃げようと考えていたのだが、そんなことは二の次になるほどアレはマジで無理である。なにか美遊の根源に近い部分がアレに関する情報をシャットダウンせよと命じてくるのだ。 『クロノが高速で接近してきます。』 『矢は?』 『間桐邸近くでアリスが迎撃を引き継いだようです。』 『川を、とにかく川を超える。』 クロが自分の逃亡を図らずも手助けしてくれるという幸運があったが、それもここまで。未遠川に差し掛かったところでついに再び変態達の肉薄を許す。そのことが美遊の神経をすり減らしていた。だがこの程度で変わる決意ではない。こんなところで変態の手にかかるわけにはいかない。その一心で彼女は自衛隊が設置した仮設橋脇の水面へと足を踏み出した。もはや神秘の秘匿とかどうだっていい、とにかくイリヤの視界に入らないようカルナの死角となリそうな場所を走り変態から距離をとる。とにかくそれだけだ。 「ダメだ、認識阻害が間に合わない……」 「失礼皆さん、押し通らせていただく。」 「変態だ!」「AVか?」「え、なにアレは……」「マジで?」「なんだあの変態!?」「足速っ!?」「やばいよやばいよガチリアルだよ……」「ブリーフ?」「警察は何やってんだよ。」「やめてください!」「この状況で良くこんなことやれるよな。」「そんなことしちゃあ駄目だろ!」「ゲリラ露出?」「汚すぎ。」「キメェ……」「嘘だろアレ!?」「えアレなんなん?」「人間の屑が……!」「映画の撮影だろヤスケンどこだヤスケン。」「どうなっちゃってんだよこの街!」 後ろからは神秘の秘匿どころか秘部の隠匿もせず顔と股間以外の全てを曝け出して狂介が迫る。走る度に揺れるおいなりさんが眩しい。それにあてられてか、通行する少女の一人など仮設橋から足を滑らせ水面へ落ちていく。 「はっ!」 だがそれを見捨てる変態仮面ではない。すぐさま欄干にあたる部分にパンツを巻きつけると水面へ急降下し、片手一本で少女をお姫様抱っこするとバンジージャンプの要領で戻ってきた。 「天使のパンティジャンプ……フゥオオオ!!」 「やるじゃない。」「おったたまげたぜ……!」「やったな!」「すげぇ!」「はわわすっごい。」「変態だけど紳士だ!」「なかなかやりますね……」「変態紳士!」「ブルっちまうぜ……!」「すっごーい!」「お前世界一や!」「Beautiful……」「聖人かな?」「変態さんありがとー!」 変態仮面が残心代わりに見栄を切ると聴衆から歓声が上がる。それに手を振って答えながら彼は再び走り出すと、上空で飛行しながら思考停止していたクロノも後を追った。 「なんなのアレ……わからない……」 「美遊様!気を確かに!」 人は理解できぬものを恐怖する。それは美遊も同じだ。さっきまで横で普通に話していた人があんなカリスマを持つ変態だということに、美遊の脳内ニューロンはショート寸前である。 世の中とはなんなのか。人とはなんなのか。何もかもわからなくなり、世界と自分が崩壊していく感覚が美遊を包む。だが走ることはやめない。既にイリヤに見られないなどということは頭から消えども走りに走る。そして。 「申し訳ありません……ハッ!」 「!?」 美遊はサファイアのハリセンで正気に帰った。気がついたら全くどこかも見当のつかぬ場所に出ていたのだ。いったいここまでどう来たのか皆目わからない。だが一つわかることは自分がサーヴァントに囲まれているということであり、そしてそこからここがなんであるのかの察しがついた。 「――教授が死んだと聞いたが、どういう組み合わせかな?」 「……あ!お前美遊か!そうか……」 鋼線を武器に戦う執事と、全身が灰色っぽい異形のサーヴァント。そしてそれを取り囲むように展開する軍服のサーヴァント達。 「ようやく追いついたが、これは……」 「教授達の本隊と、不明なサーヴァントか。」 クロノにより股間に魔術的な隠蔽を施された変態仮面と、色々と疲れた顔色のクロノ。 「なあ、お前のバーサーカーだろ?チョコ殺したの。」 「ッ!!『来て!バーサーカー!!』」 言葉と共に一瞬で現れたサーヴァントの大剣状の腕が迫る。それを転移してきたバーサーカー・小野寺ユウスケは真正面から受け止めるとその双眸を光らせた。一瞬の静寂が場を包み、そして。 「『私の敵を倒してバーサーカー!!』」 「■■■……■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」 聖杯戦争は新たな局面を迎えた。 『西』――0239、深山町柳洞寺 「で、アンタの言うとおり喋ったけど、どうすんの?」 「あんなのわかるわけない!いきなり飛び蹴りしてくるなんて!」 「全く……とりあえずあのバーサーカーは転移したみたいだし、今のうちにどうするか話し合いましょ。」 うり二つ、1Pカラーと2Pカラーのような二人が話すのは、柳洞寺の駐車場。そこに停められた一台の軽自動車の側で、衛宮とアインツベルン(と竜堂)の久方ぶりの同盟は今後について話し合っていた。 アインツベルン城を後にした三組が、間桐邸のアーチャー・赤城の念話放送をキャッチし、それに割り込んだのが十数分前のこと。少々の無茶でイリヤとクロはそれなりに魔力を消耗したが、依然として全員が万全に近いコンディションであっのが功を奏した。それがなければ、外交関係の悪化が即、死に繋がっていただろう。 イリヤの提案によるアーチャー・クロの念話放送。これ以上の参加者間での孤立を避けるべくとはいえ、ほとんど独断で行われたそれとその後受けた奇襲に関して、善後策を考えるには時間が必要であるとの判断だ。 「急に何をしだすかと思えば和平交渉とは、な。しかも私を脅しの材料とするとは。」 「いやー、それに関しては申し訳ないとしか……ゴメンねバーサーカー。向こうは騎士王に施しの英雄でしょ、こっちも対軍宝具チラつかせなかったら交渉になんないってイリヤとパパが……」 「ふ、確かに。冷静な判断だ。拮抗しなかったら向こうも動かないだろう。もっとも、だからこそ奇襲を相手は選んだのかもしれないがな……切嗣、この寺院には結界が張られているのか。」 「ああ。ここの結界はこの参道以外から入ろうとすると、特に霊的な存在には著しい障害となる。」 「なるほど、良い陣地だ。」 地脈の流れと結界を確かめながら竜堂ルナのバーサーカー・ヒロは先頭に立って歩く。少しして全員が本堂に辿りつくと、他の避難民に交じって一角に車座になった。 「かなりの霊脈だな。ここなら魔力の回復も早い……さて、初めるか。」 クロとルナの銀髪の二人はかなり目立つものの周りからは一瞥して姉妹として勝手に解釈され話しかけられもしない。それよりも彼らは街の様子が気になるのだ。なぜなら、また一つクレーターができたのだから。 「改めて聞くが、あのバーサーカーに心当たりがある者はいないか?」というヒロの質問から始まったのは、先のバーサーカー・ユウスケとの戦闘の振り返りだ。 一部始終はこうだ。ますユウスケに気づいたのはうず目で周囲を警戒していたルナである。間桐邸と穂群原学園の中間地点程で実体化した彼を見たルナはすぐさま全員に知らせた。 その一秒後、まずヘラクレスとヒロが彼が空へと飛び上がっていくのを目にし、更にその一秒後切嗣が彼がライダーキックの姿勢に入るところを目にし、更にその一秒後にイリヤとクロが迫り来る彼に気づいた。 この時イリヤはヘラクレスを突っ込ませクロが『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を展開しヒロが魔招・煉獄を放ったところ、直撃でヘラクレスが一度消し飛びロー・アイアスがほぼ全て割られるも、奇跡的に(というかユウスケがヘラクレスを殺すことを最優先としたために)イリヤのベンツが破損した他は特段の被害もなく、ヘラクレス以外の全員が生存することとなった。 そして奇跡的に(というかユウスケがヘラクレスを殺すことを最優先としたためにってこれさっきも言ったな)ユウスケが蘇生するヘラクレスを執拗に死体蹴りしていたために、マスター達は車でアインツベルン城目指して逃走し、クロはユウスケ以外の襲撃を牽制するために適当に距離をとって間桐邸の同盟に攻撃を加えた。 そして数分前、耐性を獲たヘラクレスの反転攻勢から逃れるように(実際は追い詰められた美遊が呼び寄せたのだが)ユウスケは令呪で撤退し、ここに戦闘は終了したのであった。 「イリヤ、ヘラクレスは今どこにいる。」 「霊体化したままこっちに向かわせてる。門の辺りで見張らせておくの。」 「理想的な守りだな。ここならば休息にも防衛にも長ける。奴の傷は。」 「蘇生したから大丈夫。六つ命を奪われたんだから、もうアッチのバーサーカーに傷一つつけられたりしない。」 「頭とか心臓が再生するたんびに別の武器で潰してたわね……12回生き返るのもズルっぽいけどアッチもかなり汚い手で回数稼いできてたね。」 「……妙だな。」 「ヒロ、どうしたのってキリツグに聞いて。」 「いい加減直接話してくれよ……切嗣、妙というのは、なぜバーサーカーがヘラクレスの殺し方を知っていたかか?」 「ああ。『十二の試練』の詳細な情報は、僕達だって車でここに逃げてくる時に初めて説明された。なのになぜ、あのバーサーカーは適格な殺し方を知っていたのか。」 「真名が割れて、いや、それでも宝具について詳し過ぎるか……」 「あ、そうだ。私は外で街の方を見張っとく。何かあったら連絡して。」 「ああ、任せた。さて問題はまずここと城のどちらを拠点とするかだ。相手は無関係な民でも容赦はないことを考えるとここの優位も限定的で――」 会議に自分以外の人間が集中しているのを良いことに、クロは境内へと出てくる。そして何人もの人間がそうしているように、クロもそこから街並みを眺めた。 「なーんも無くなっちゃった……」 側にいた老婆がそう言いながら泣き崩れたのを寺の僧侶がなだめる。他にも泣かずとも呆然とした人間は大勢いて、誰もクロの服装にも存在にも注意を払う者はいない。そのこと自体はありがたかったが、それだけの状況を友人が引き起こしたとなると陰鬱な気持ちになった。 「何やってんの、美遊……」 先の襲撃で穂群原学園が瓦礫の山と化したのを目に焼き付けながら、クロは東へ目を向けた。あの時、あのバーサーカーは恐らく美遊によって転移させられた。となると避難所であった学校ごとお構いなしに殺しに来たのは美遊ということになる。そしてその美遊は現在間桐邸の同盟と思われる人間と戦っている。いったい何が起こっているのか。 クロはもう一度だけ学校とその近くにできたクレーターを見ると再度新都で戦う美遊を見る。そして空が凍りつき見知った槍が振るわれたのを見てから無言で霊体化した。 『東』――0238、新都廃ビル・最後の大隊臨時前線司令部・『豹の巣(仮)』近く 「『ここに来いライダー!』」 「――超変身!!」 クロノに迫る黒い甲冑のような筋肉に包まれた豪腕を、同じく甲冑ような筋肉に身を包んだ紫に金の異形が間に入ることで受け止める。二人のクウガを間に挟み3メートルの距離で、それぞれのマスターである美遊とクロノはサーヴァントの背に隠れ次の行動へと入った。美遊はユウスケが口に咥えていたカードを手にし、クロノは詠唱を行う。そして謎のサーヴァントが再び美遊に斬りかかろうとして、その動きが止まった。 「クロノ、なんの真似だ。」 「悪いが、美遊をやらせる気はない。だが――」 不可視の鎖、クロノのディレイドバインドに絡めとられたサーヴァントの問いかけに決然と答えながらも、五代の背から一歩歩み出て杖となったS2Uを美遊に突きつける。互いに微かに顔が見える状態でクロノは宣言するように言った。 「美遊、君を聖杯戦争終結まで拘束させてもらう。」 「……イヤって言ったら。」 「言えなくする。」 二人のクウガの足元にヒビが入る。行き場の無い力はヒビとして周囲に伝わり。二人のヒビが重なると共に小さな破裂音が鳴る。まるでそれは運動会のピストルのような抜けた音ではあったが、切っ掛けとしては充分だった。 「『限定展開(インクルード)』!」 「スティンガー!」 美遊が行動を終えるより先にクロノの早打ちが足を撃つ。美遊の体制が崩れたのを認めると、クロノはバックステップで距離をとりに動き、美遊はダッシュで距離を詰めに動いた。 クロノは術式をスティンガーからバインドに切り替えながら考えた。相手の武器は槍、なら近接戦闘は避けるべきだ。ここはバインドの連打で牽制して相手のミスを誘うべき、そう判断して緩急をつけたバインドと不意打ち気味に放つスティンガーで戦闘を組み立てようとする。 一方の美遊は、手にした切り札の射程に入れるべくなんとかクロノに近づこうとしていた。ルビーからルーラーにクラスカードを奪われたと聞いてその奪還を考えてはいたが、ユウスケにルーラーを殺させた時にはとてもではないがそんなことを気にかけている余裕は無かった。ようやくカルナ戦のどさくさに紛れて教会に向かわせた時には既に警察により現場が抑えられた後、ただでさえ瓦礫で探しようのない状態では千里眼による透視能力すら持つユウスケであってもボロボロになったカード一枚探すのがやっとだった。 だが、この一枚があれば良い。自分はまだツイている。そう美遊は自信を持って言えた。ユウスケの見つけ出してきたのは、なんの因果か一番使い慣れたランサーのカード。これならば、クロノを殺しきれる。そう考え宝具解放の機会を伺いながら不意に放たれたスティンガーレイを紙一重で回避し前へと足を踏み出して、しかし、飛び退いた。 「クロノくん、援護する!」 「キョウスケ!危険だ!」 「危険なのは君も同じだろう!ハアン!!」 「ッ!変態が二人か……」 (僕も変態扱いなのか……) クロノの攻撃に合わせて、変態仮面の鞭が美遊へと迫る。その無駄に適確で無駄に息を合わせた攻撃は、クロノにとっては不本意であるが非常に効果的に美遊の行動を抑制していた。 変態的なニ対一は着実に美遊を追い詰める。一瞬美遊はユウスケを見た。あちらはもう一人のクウガを押してはいるが、うまく防御されてしまっていてまだかなりの時間がかかりそうだ。恐らく彼が五代だろうが、令呪のブーストがある間に倒せるとはとても思えない。となると自分は早晩魔力切れを起こすしかない。 「上です!」 「お願い!」 「邪魔すんなクロノ。」 「やめろセイバー!」 美遊が戦略の組み立ての為にわずかに攻撃の手を緩めたのを隙と見てか、兜割りにするかのように腕を振り下ろすサーヴァントの対処をサファイアに任せ、美遊はクロノの距離を詰めにかかる。それをすかさず変態仮面が鞭で牽制し、クロノは二人にバインドを向かわせながら距離をとる。そして今まで蚊帳の外であったウォルターが唐突に鋼線を振るうとサーヴァントは腕の一部を奪われながらも間合いを開けながら蝶を放った。 「それはパピヨンの……それにその腹の金属は!」 「セイバー?なんだ……ああ、私か?」 「正気を失っているのか……キョウスケ!」 「うおっ!」 「早いか……ルビー。」 クロノの言葉で変態仮面は、爆煙に紛れ心臓へと襲い来る魔槍をブリッジで回避する。そして股間でホールドしながら槍を奪おうとして、魔力弾に弾き飛ばされた。そこに先に変態仮面を狙わんと美遊が踏み込むも、光弾が行く手を阻み、全員の動きが一時止まる。 「ようやく落ち着いたか。やあクロノと美遊と、変態?まあいいや。教授が殺されたみたいなんだけどなんか知ってる?あとその――」 どこからともなく現れた准尉がサーヴァントに唐竹割りにされる。そして今度はウォルターの後ろに現れて「今僕を斬ったコイツのこととか」と続けた。 「准尉、そのサーヴァントを倒す為に共闘したい。」「バーサーカーのイリヤ側と衝突がありました。詳しくは美遊さんを拘束した後で。」「私は変態仮面。呼びにくければHKでも構わない。」 「ごめん一度に言わないで。とりあえず美遊、そこのサーヴァント相手ならいいと思うよ。」 「待ってくれ、そんな短絡的に話を――」 「そいつは真田幸村を殺して宝具を奪い取ったヤバイやつだよ!」 「だが見てくれクロノくん。セイバーの首から下はいおりちゃんのランサーだ。そして腹には私のキャスターの宝具。彼女が怪しい存在であることは間違いない。」 「お前だけには怪しいなんて言われたくない。」 「変態なのにすごい洞察力だ……!」 「わかった准尉、美遊とサーヴァントの二人を殺さずに拘束するのなら僕は君達に協力しよう。」 「あ、それなら君につくよ。」 「え。」 「美遊の相手は引き続き僕がやる。そっちはサーヴァントを。」 「オッケー。てことだから頼んだよウォルター。」 それぞれが捲し立てながらゆっくりと位置取りをしていく。目まぐるしく敵味方が入れ替わるのに合わせて、四者が動く。そして二人のクウガが揉み合うのを中心に正方形を形作るような場所で止まった。ということはつまり、この戦場は最初の時のように切っ掛けはクウガ次第となる。 「……セイバー、ここは共闘――」 対角線から話しかけてきた美遊にサーヴァントは無言でロケットを放つ。それをユウスケがパンチで消し飛ばしその隙に五代が再び超変身したのを端緒に四角形は崩れた。距離をとりながらクロノは顔面に、変態仮面は足に攻撃を加え、美遊は中空に滑り込むようにしながらクロスレンジへ持ち込むべく踏み出し、ウォルターはサーヴァントへと鋼線を放ち、サーヴァントはそれを幸村から受け取った宝具を頼りに強引に突破し蹴りを放つ。 「おりゃあぁぁっ!!」 「■■■■■■■!!」 そして全員が次の行動を起こそうとした時に、二人のクウガの拳の激突で発生した衝撃波が全員を弾き今度は歪な平行四辺形の頂点となる位置で何度目かになる睨み合いが発生する。だが今回は美遊が動き出すことですぐに膠着状態は解けた。そして美遊は同時にユウスケに指示を送る。この戦場で一番余裕が無いのはユウスケを戦わせている美遊であり、魔力勝負になれば未だ二画の令呪を残すクロノ相手に勝ち目はない。故にここはユウスケに令呪の効果が残っているうちに強引にでも勝ちに行く。 「バインド!」 「誘導。」 「左、右、真ん中です。」 クロノの放つ可視不可視織りまぜた魔力の鎖を、サファイアの感知能力を頼りに突破し浸透する。転身してもなお見えぬそれも、カレイドステッキが持つ視覚以外の感知能力ならば察知できぬことはない。もしあるとすれば極限まで魔力を減らした脆い鎖だろう。 (!?足が!) 「スティンガー!」 「……!」 だからサファイアと美遊は自分の足の裏のほんの一部分だけをわずかに拘束したそれに気づかなかっ達。彼女からすれば少し硬めのガムを踏んだような感覚だが、槍の投擲姿勢に移行するための動きがワンテンポ遅れてしまう。そしてその間にクロノは彼の周囲を渦巻いて飛ぶ光弾を発生させた。続けて彼は光弾を加速誘導しようとして、しかし光弾は掻き消える。 (今のはクウガの――キョウスケ!」 「クロノくん!来るぞ!」 クロノはそれがクウガのモーフィングパワーによるものだとはわかっていた。だがだからこそクロノには打つ手がない。いや、魔力で戦う者は皆一様にそうだ。クロノのバリアジャケットもサーヴァントが飛ばす蝶も全て鎔けるように消えていく。今この空間では魔力そのものがなにか他の物質に変換されている。 「やらせん!」 「また……!」 そしてその中で一人変わらず魔槍を振るう美遊の一撃がクロノの心臓を捉える寸前で変態仮面により白刃取りされた。この力はアルティメットフォームによるもの。ならばそれはアメイジングマイティフォームである五代が偶然に引き起こしたものではなくアルティメットフォームであるもう一人のクウガによるものであり、つまりは美遊の一策に他ならない。令呪と美遊の魔力を考えても、ここで彼女が決着をつけに来たのは明らかであった。 ならばこちらも全力で止めるしかない。あのクウガを止められるのは、同じクウガである五代だけだ。そう判断してから彼が行動を起こしたのは、三秒と経たぬ間のことである。 「『五代さん、貴方の全力でもう一人のクウガを倒して!』」 「――!わかった、離れて。」 迷っていたのはほんの僅かな間。美遊がそうしたように二画目の令呪を切る。でなければ勝ち用などない。そもそも同じ条件を整えずに戦うこと自体が慢心に他ならないと自身を戒める。このままでは彼女を止めるどころか手を汚させることもできないのだから。 「狂介さん、ここは引きます。」 「美遊ちゃんはどうする。」 「彼女は僕を狙って着いてきます。」 「わかった。」 話しながら変態仮面はクロノを抱え、ロープを使いビルへと駆け上がる。それを見て美遊も追跡に入らざるをえない。ここに残っていればクウガ同士の戦いに巻き込まれボロ雑巾のように死ぬだけだ。同様のことを考えてかもっと前からか、いつの間にか吸血鬼も皆撤退している。 「これで邪魔が消えた。」 「サファイア!」 そしてそうなるとフリーになるのがサーヴァントだ。素の運動能力は美遊を上回っているのだ、多少サファイアの障壁で抵抗されようとも美遊の殺害は不可能ではない。 クロノは自身から五代に流れる魔力が激増したのを感じながらも美遊が着いてきているか目で追い続ける。四本の角を生やした二人の黒いクウガを背景に、美遊とサーヴァントは着実にこちらに近づいてくる。それでいい、そのまま来い、そうクロノは祈る。モーフィングパワーの影響下から抜けることは変態仮面のスピードならば十秒もあれば充分だ。後ろの二人もそうばん魔力が使えるようになる。そうなればあの二人に割って入ることができるようになる。そう考えたところで、クロノはその発射口を見た。 変態仮面に抱えられビルからビルへと渡る中でそれの存在に気づいた。半壊したビルの地下から、ニョキリとミサイルのようなものが伸びている。いや、これは正確ではない。正確には、ミサイルが『伸び上がって』いる。発射煙の一部が弧を描いて消えプラズマの光が走っているのが見えた。それがなんなのかわかりたくないが、考えつくのは一つだろう。あそこは今は亡きライダーの、ナチスのサーヴァント達の拠点。その拠点から打ち上げられるミサイルなどどう考えてもマトモではない。 「抜けたぞ!」 「僕がセイバーを。」 「美遊ちゃんはなんとかする。」 ビルから飛び上がるように巻き付けたロープを解放し、変態仮面とクロノはそれぞれに体制を整え屋上へと着地すると二人を挟むために移動を開始する。二人が戦うのは地上の道路の上。そこにそれぞれビルの壁面を駆け下りて奇襲を試みる。 それぞれに縄を持ちバリアジャケットを誂え、そこでクロノは違和感に気づいた。 よく考えれば、自分がこうして駆け下りているのはおかしい。地上で戦うクウガがモーフィングパワーを使えば、その効果範囲はどうなるだろうか。クウガを基点に周囲に影響が及ばされるため、基本的には球体状を取るはずである。五代というクウガの例しかクロノは知らないがそこに特段の差異があるとは考えにくい。つまり効果範囲はドーム状のはずだ。であれば、さっき自分が降りたのはビルの屋上という高度がある場所であり、そこから地上に近づけば当然ドームの縁に、つまりはモーフィングパワーの効果範囲に再突入するはずだ。 であるにも関わらず、自分は普通に動けている。それだけではない。美遊は変わらず動き槍と魔力を振るう。となれば考えられるのは一つ。 「『絶対に勝ってくれ五代さん。』」 たかが令呪を使ったぐらいで切り札を切った気になっていた。 美遊が同盟の為に自分達から離れたと信じたかった。 それらは全て避けることができたミスだ。 きっとそれは、今からでは挽回しようがない。 だからできることをやっておく。 クロノは最後の令呪を使い、そして同時にデュランダルの待機状態を解いた。 「――悠久なる凍土」 数発のミサイルが打ち上がっていく。サーヴァントが美遊の張ったバリアを叩き割る。それを無視して美遊は魔槍に魔力を注ぎ込む。 「――凍てつく棺のうちにて」 一足先に降りた変態仮面が美遊に縄を向かわせる。クロノの想像通り、彼女が選んだのは迎撃でも回避でもなく防御。恐らく杖に任せたであろうそれは、後方から同時に斬りかかるサーヴァントの剣戟を防いでいることからも相当の耐久があると察せされる。それだけの魔力を練り混んだということは、下がる気は一切ないということであり、次の攻撃の為の時間稼ぎに他ならない。パターンとしてはなのはのそれに近いと言える。 「――永遠の眠りを与えよ」 「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』」 「打たせん!」 ならば隙は発射の瞬間にある。美遊がどんな魔法を使うにしても発動時には障壁を解放する必要がある。その瞬間が勝機だ。 詠唱を終えた美遊が槍を構える。そして障壁が消える。そのタイミングに合わせるように変態仮面とクロノは攻撃を終えていた。変態仮面の鞭が槍を絡め取り、クロノは間合いの内に入る。砲撃型魔法の死角はゼロ距離だ。この距離では攻撃はできず、バリアも張れない。そして何よりもこのポジションは戦術的な意味だけでなく戦略的な意味も合わせ持つ。美遊、セイバー、ミサイルが一直線上に並ぶここからエターナルコフィンを放ち、その全ての脅威を同時に『凍結』させる。聖杯戦争脱出の目処が立った今、決して誰かを殺させることも誰かを殺人犯にすることも肯定しない。 『クロノくん、行くよ。』 脳内に五代からの念話が響いた。あちらも決めるようだ。こちらも最後の一撃を決める。 クロノはデュランダルを美遊の腹に叩きつけるように突きつけた。そして最後の一節を口にする。今からやることは問題の先送りだが、今はその先送りこそが重要なのだ。彼女を殺さずに拘束できる。クロノはこれが最後と思い美遊の目を見た。 その目に何一つ驚きの色がなく、勝利を確信していると感じた。 (やられた。) そしてクロノ・ハラオウンの心臓に赤い槍が深々と突き刺さった。 『東』――0244、新都西部 「はあぁぁ……」 「■■■■……」 元の戦場に取り残された五代と小野寺。すっかりすっきりとした一帯の一角で、互いが互いを殺すべく対峙する。相手は自分の鏡写しの存在なのだ、その行動を止めるために必要な手など限られている。ましてグロンギのように言葉が通じるならまだしも、言葉を交わせないのならば、その拳をもって語る以外に術はない。それが二人に唯一可能なコミュニケーション手段であり、だがそれ故に二人が同じ感情を持っていることを何よりも雄弁に語りまた理解していた。 二人のユウスケと二人のクウガは、同じように傷つき同じように息を荒らげる。平行世界の同一人物なのだ。アルティメットとライジングアルティメットという違いはあれど、その差は技術と経験と理性で埋められる。そして二人に使われたのは、同様に転移の為の令呪と勝利の為の令呪。故にこの戦闘はどこまで行っても均衡する、というわけではない。この戦闘、美遊もクロノも令呪によって己のサーヴァントに回す魔力を自身に使用している。故に、令呪の効果が切れた時がマスターの魔力が枯渇する時であり、またどちらかのサーヴァントが敗れる時である。そしてそれは、おそらく美遊の方がわずかに早い。フォームとクラス、そして令呪を切ったタイミングの差が確実に存在する。 二人の周囲にプラズマが走る。モーフィングパワーと超能力無効化の応酬は小野寺に軍配が上がり美遊の思惑通りクロノの妨害に成功している。かなりのものを五代が打ち消しているものの、ある程度の指向性を持たせたそれはなんとかクロノを一時的とはいえど無力化していた。そしてそれはつまり、魔力供給を遮断したことを意味する。伝う魔力ごと魔力パスを変換してしまえるからだ。 小野寺が走る。五代も走る。一時的な魔力供給の差を当然美遊は逃したりしない。最大の技を小野寺にしかけさせる。それを受けて立たねばならぬ五代も、同様に自分にできるであろう最高のキックを放つために跳躍した。 音すら置き去りにし、二人の必殺技が放たれる。真空の空間が広がる。有利なのは、やはり小野寺だ。モーフィングパワーはやめたが、それまでの魔力差と単純な力比べということで優位に立つ。くるくると駒のように回転する二人だが、もしこのままなら数秒で小野寺のキックが五代のアマダムを砕くだろう。 だが違った。五代のキックの勢いが、蹴りの最中なのに加速する。それを可能としたのは、クロノの三画目の令呪。美遊が真似しようのないそれは、策謀による魔力消耗を覆してあまりある。そしてその状態で二人への魔力供給が途絶えれば、結果は見えていた。 「――グアッ!!?」 「■■■、■……」 両者のキックは急速に失速する。変身もみるみる弱体化する。最初の衝突が嘘であったかのようにまるで線香花火のようにポトリと落ちた二人には、現界を維持する魔力はもちろん変身する魔力も残ってはいなかった。 (空が凍ってる……クロノくん!) 「■■あ、お■■あ!」 「うわっ!」 上空に縫い止められるかのように静止した六発のロケットや、報道の為に飛行していたであろうヘリ、衝撃に驚いて飛び立った鳥。それらに呆然とする間もなく五代は殴られる。グローイングフォームにもなれず生身で殴りかかってくる小野寺にマウントポジションを取られながら、五代はされるがままにした。もはや彼に小野寺と戦う気力は無かった。必要が無かったからだ。五代を殴る小野寺の拳は、実体化に耐えられず消滅していく。その原因も知っている。美遊を殺すことを良しとしない彼のことだ、全て氷漬けにする道を選んだのだろう。さっき小野寺がそうしたのと同じようなことをクロノがしたと考えれば、小野寺の消滅は確実であった。 「■ぃ、■ぅ、■……」 「……」 泣くように呻くように呟きながら、バーサーカーはかろうじて実体化した肘で殴り続ける。だがそれだけだ。アスファルトの上の残雪のように溶けていく。そして同様に五代も溶け始める。いかんせん魔力を使いすぎた、これではアマダムも追いつかない。 (クロノくん……笑顔を、みんなに……) 色々と名残惜しいことはある。だが五代は信じていた。クロノならきっと、うまくやったと。有能さと如才なさと抜け目無さと人間性を信じていた。 夜空に煌めく氷塊と化した空間を見ながら、五代雄介は静かに聖杯戦争から退場した。 「――凍てつけ、エターナルコフィン。」 心臓に深々と刺さった槍が勝手に抜けるのを無視して、クロノは最後の一節を唱え終わるとデュランダルの前に身を踊らせた。狙いは雑だがこの距離なら少なくとも美遊は巻き込める、魔力が若干足りないがむしろ範囲を絞れて好都合、そう開き直って自分が止まっていくのを受け入れた。 彼の狙い通り美遊もサーヴァントも同様に静止していく。宝具に匹敵する反則クラスの魔法だ、止まってもらわなくては困る。そんなことを既にクロノは考えられる状態ではないが、しかし彼の狙いとしてはそんなところだ。 「……終わったのか。」 最後の一撃はあっけないものだ。クロノも美遊も謎のサーヴァントも、まとめて停止している。それを見て唯一その巻き添えを喰らわなかった変態仮面は、様々な感情がこもった声で呟いた。 何も言わずに変態仮面はパンツを取る。変態仮面から色丞狂介へと戻ると、改めてクロノを見た。心臓の傷口からは今にも流れ出そうな血が見え、だがその表情に怯えの色は一切ない。あるのはただ純粋な覚悟の色だけである。 次に美遊を見る。受け入れたくはないが、彼女は本気でクロノを殺す気だった。それは矛盾した行動だ。ならなぜ同盟を抜けたのか。あの凶行は同盟の為ではなかったのかと問いたい気もするが、もはやそれは叶わないだろう。 最後にサーヴァントを見る。首と胸と腹に痛々しい傷があるそれを、狂介は複雑な表情で見た。あのカルナとの戦いでパピヨン達に何があったのか、自分がもっとうまく令呪を使っていればこんなことにはならなかったのではないか、そもそもどういうことなのか。わからないことは多いが真相は氷の中だ。 「ん?これはクロノくんのカードと、美遊ちゃんのステッキ?」 三人から目を逸らすように下を見て、狂介はそれに気づいた。どちらもクロノからこぼれ落ちたものだ。距離の近さから射角から漏れたのであろうそれは、ぽつねんとコンクリートの上に転がっている。今となっては、これは遺品となったのだろう。そう考え、狂介は三人に一度手を合わせるとカードとステッキを手に取った。 「……伝えなくちゃいけないよな、何があったのか。よし!」 気合いを入れると狂介は再びパンツを被る。今は一刻も早くみんなにこの戦闘について伝えなくてはならない。『必勝法』の中心人物だったクロノの戦線離脱は、この聖杯戦争を止めることができなくなってもおかしくない事件だ。早急に対策を取らなければならない。狂介は走り出した。 『美遊様、待っていてください。』 その狂介に持ち去られることとなったサファイアは、勘づかれぬよう念話を送る。サファイアは今やただのアクセサリーだ。彼女一人で美遊を救うことはできない。故に慎重に立ち回る必要がある。自分に自律した意志があることを誰にどのタイミングで明かすのか、それで美遊の扱いは確実に変わる。サファイアはその時を待ち静かに感覚を研ぎ澄ませた。 「全弾止められたか。」 「僕達の切り札だったんだけどねー。」 「ハッ!とにかくあのめんどくさい化物は死んだんだ。それにまだ毒ガスはある。今のうちに再編成を進めるぞ。」 一方吸血鬼達は『豹の巣』へと戻って来ていた。彼らの頭上には今もミサイルが浮かんでいる。ひとまず、ここを放棄してアジトを移すのが最優先だと残存戦力は動き出していた。なんだかよくわからないが、なんだかよくわからない奴らは無力化したのだ。懸案事項が一つ消えたことは間違いない。彼らもまた、この聖杯戦争での振る舞いについて頭を使うこととなる。 各々の願いと策謀を乗せて聖杯戦争は進んでいく。とっくに後退のためのレールはない。あるのはそれがどんなものであれ、終劇への一本道だけだ。 【深山町北部/2014年8月2日(金)0245】 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】 [スタンス] 聖杯狙い [状態] 『日輪よ、具足となれ』、変身済、精神的疲労(小)、髪がちょっと短くなった [残存令呪] 二画 [装備] カレイドルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる 1 わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター(イリヤ(sn))と、色違いの偽者(クロ)を殺す。 [備考] ●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です ●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています ●『死なないで、ランサーさん!!』の令呪を使用しました。 【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】 [スタンス] 奉仕(イリヤ(pl)) [状態] 筋力B(8) 耐久C(6) 敏捷A(10) 魔力B(24) 幸運A+(30) 宝具EX(?) 『死なないで、ランサーさん!!』の令呪の影響下、左腕・左脚・左目喪失(治癒中)、その他心臓を含む左半身へのダメージ(極大・治癒中)、右半身へのダメージ(大・治癒中)、霊核損耗(大)、槍半壊。 [思考・状況] 基本行動方針 イリヤスフィールを聖杯へと導く 1 指示があり次第冬木市に宝具を使用する。 2 美遊に興味。 [備考] ●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました ●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。 ●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。 ●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。 ●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。 ●美遊 バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。 ●ランサー・真田幸村の真名を把握しました。 【間桐邸/2014年8月2日(金)0245】 【遠坂凛@Fate/Extra】 [スタンス] 聖杯狙い(ステルス) [状態] アヴァロンを体内に所持 [装備] ナイフ@Fate/Extra [道具] ドール(セイバー仕様)@Fate/Extra、ドール@Fate/Extra×若干数、未確定の礼装×若干数、邪魔にならない程度の大金、スズキGSX1300Rハヤブサ(朱・リミッター解除済)@現実 [残存令呪] 三画 [思考・状況] 基本行動方針 当然、優勝を狙う。 1 カルナ側と間桐側とアインツベルン側の動きを見て出し抜ける機会を伺う。特に間桐慎二を警戒。 2 クロノと慎二のキャスター(フドウ)はできる限り早く殺したいのでこの二組を分断したい。 3 空爆や闇討ち、物量戦法、並びに教授達吸血鬼を強く警戒。 [備考] ●自宅は遠坂邸に設定されています。 内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。 ●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。 まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。 ●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。 ●ライダー(五代雄介)とセイバー(テレサ)の真名とステータスを把握しました。 ●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。 ●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。 ●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。 ●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。 ●ドールのステータスは筋力B耐久B敏捷B魔力E幸運E宝具なし、です。ただし破損と引き換えに宝具以外のステータスを1ターンの間セイバーと同等にできます。 ●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。 また美遊から話されたイリヤ(pl)のことをイリヤ(sn)のことと誤認しました。バーサーカーが瀕死であるとも誤認しています。 ●美遊のバーサーカー(小野寺)が脱落していないことを知りました。 【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】 [スタンス] 聖杯狙い(ステルス) [状態] 筋力(50)/A、 耐久(40)/B、 敏捷(40)/B、 魔力(100)/A+、 幸運(100)/A+、 宝具(??)/EX、 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯の力で王の選定をやり直す。 1 厭戦ムードが弱まるまで好戦的な言動は控えて出し抜ける機会を伺う。 2 クロノと慎二のキャスター(フドウ)、並びに教授達吸血鬼はできる限り早く排除しなくてはならないので分断を試みる。 [備考] ●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。 ●スズキGSX1300Rハヤブサ(青・改造済)を乗りこなせるようになっています。騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。現在は小破していますが走行に影響はないようです。 ●爆破予告と慎二からもたらされたホテルの情報を把握しました。またナチスに関する若干偏った把握をしました。 ●アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。 ●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。 ●聖杯戦争についての疑念を抱きました。 ●バーサーカー(ヘラクレス)をランサー(カルナ)と誤認しました。同一の英霊が別々に召喚されたのではないかなどと疑っています。 【アリス・マーガトロイド@東方Project】 [スタンス] 脱出優先 [状態] 『必勝法』を共有済。 [残存令呪] 三画 [思考・状況] 基本行動方針 幻想郷に戻ることを第一とする。 1 慎二・クロノと共に『必勝法』を実行に移し、この場で聖杯戦争からの脱出を実現する。 [備考] ●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。 ●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。 ●アインツベルン城の情報を知りました。 ●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。 ●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。 ●自宅は新都にあります。 ●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。 ●この世界に関する考察を共有しました。 【赤城@艦隊これくしょん】 [状態] 筋力(20)/D、 耐久(150)/A++、 敏捷(20)/D、 魔力(10)/E、 幸運(30)/C、 宝具(30)/E+++ [スタンス] 奉仕(マスター) [思考・状況] 基本行動方針 マスターを助ける。今度は失敗しない。 1 念話で呼びかけてなんとか戦闘を回避する。 [備考] ●アインツベルン城上空を宝具で偵察しました。 ●アインツベルン城の情報を知りました。また赤城の宝具はアインツベルン城に施された魔術の影響を受けることを認識しました。 ●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。 ●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。 ●ルーラー(ミュウイチゴ)の情報判定に成功しました。ステータス、スキル、宝具、属性、真名を把握しました。 ●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。 【間桐慎二@Fate/stay night 】 [スタンス] やけくそ [状態] 『必勝法』を共有済。 [残存令呪] 三画 [思考・状況] 1 どうしょもないのでなんとかして『必勝法』で聖杯戦争から脱出する。 [備考] ●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。 クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。 ●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)、教授、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。 ●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。 ●キャスター(パピヨン)の好感度が下がっています。また凛とイリヤとアリスとクロノに不信感を抱きました。 ●遠坂凛が自分の知っている遠坂凛ではないと気づきました。 ●アインツベルン城の情報を知りました。 ●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。 ●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。 ●この世界に関する考察を共有しました。 【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】 [状態] 筋力(30)/C、 耐久(40)/B、 敏捷(60)/C+、 魔力(100)/A+、 幸運(50)/A、 宝具(50)/A [思考・状況] 基本行動方針 マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━ 1 慎二がこの場でどう動くのかを見て、見定める。求めるなら仏の道を説くというのも。 [備考] ●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。 ●狂介に興味を持ちました。 ●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。 ●柳洞寺僧侶達を中心に『徳のある異国の高僧』として認識されました。この認識は結界発動中に柳洞寺の敷地から出ると徐々に薄れていきます。 ●間桐邸地下に陣地を作成しました。 ●『必勝法』とこの世界に関する考察を共有しました。 【野比のび太@ドラえもん】 [スタンス] 対聖杯 [状態] 『必勝法』を共有済、決心ハチマキ(聖杯戦争を止める)、さいなん報知器作動中、軽傷(主に打撲、処置済み) [道具] ひみつ道具三つ(未定)、四次元ポケット [残存令呪] 三画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争を止めて家に帰る。 1 慎二さん達と一緒に『必勝法』で聖杯戦争を止める。 2 美遊が色々と心配。 [備考] ●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。 ●アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを確認しました。 ●この世界に関する考察を共有しました。 【高遠いおり@一年生になっちゃったら】 [スタンス] 脱出 [状態] 意識朦朧、ダメージ(大)、肋など数ヵ所骨折、魔力消費(極大)、衰弱(大)、疲労(大)。 [装備] 貴重品の入ったランドセル。 [残存霊呪] 1画 [思考・状況] 基本行動方針 死にたくないし死なせたくない。 [備考] ●所持金はタンス預金程度。 ●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。英霊・アリシアの情報の一部を聞いたのみです。 ●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。 ●シュレディンガー准尉、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドッグ)、キャスター(パピヨン)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドク、ライダー(少佐)、アサシン(千手扉間)、セイバー(テレサ)のステータスを確認しました。 ●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。 ●ホテルにいる主従達と情報交換しました。 ●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。 【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [スタンス] 優勝 [状態] 瀕死(くも膜下出血・全身打撲・背部に大火傷)、心停止。 [道具] 着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2 [残存令呪] 0画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!! [備考] ●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。 ●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。 ●自宅は深山町のどこかです。 ●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。 ●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。 ●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。 ●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。 ●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。 ●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。 ●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。 ●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。 ●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。 ●ツイッターでトレンド入りしました。 ●警察にマークされました。 【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】 [スタンス] 対聖杯 [状態] 筋力(39)/B 耐久(27)/D 敏捷(49)/A 魔力(20)/B 幸運(150)/A++ 宝具(40)/B 『必勝法』を共有済、右腕喪失(処置済)、霊核損耗(微)、魔力消費(大)、巨乳化、鉄心 [思考・状況] 基本行動方針 マスター第一。 1 『必勝法』の協力者を増やして聖杯戦争を停滞させ、聖杯の破壊の機会を手繰り寄せる。 2 アーチャー(ワイルド・ドッグ)の死に疑念。 3 変態仮面達とドク、慎二組に恩義。ただしドクとそのマスターのライダーはアーチャー(ワイルド・ドッグ)と繋がっている可能性が濃厚なので警戒。 [備考] ●自宅内のガレージを中心に鳴子を仕掛けました。 ●ナノカ・フランカの左腕(令呪二画付)をクーラーボックスに入れて所持しています。 ●ホテルにいる主従達と情報交換しました。 ●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。 ●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。 ●アーチャー(ワイルド・ドッグ)、ランサー(真田幸村)、ランサー(アリシア)、キャスター(パピヨン)、アサシン(千手扉間)、ドク、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)、キャスター(フドウ)、シュレディンガー准尉、大尉のステータスを把握しました。 ●この世界に関する考察を共有しました。 【大尉@ヘルシング(裏表紙)】 [スタンス] エンジョイ [状態] 筋力(40)/B、 耐久(30)/C、 敏捷(40)/D+、 魔力(30)/C、 幸運(10)/D、 宝具(0)/なし、 魔力消費(微)。 【柳洞寺/2014年8月2日(金)0245】 【衛宮切嗣@Fate/zero】 [スタンス] 対聖杯 [状態] 五年間のブランク(精神面は復調傾向)、魔力消費(小)、精神的疲労(大・消耗中)。 [装備] 89式自動小銃(弾丸20×6)@現実、防弾チョッキ2型(改)@現実、個人用暗視装置JGVS-V8@現実、00式個人用防護装備@現実、トンプソン・コンデンター@Fate/zero、起源弾@Fate/zero×27 [道具] 89式自動小銃数丁@現実、弾丸数千発@現実、00式個人用防護装備数個@現実 [残存霊呪] 二画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。 1 まず善後策を話し合う。 2 家族の生存を第一に考え、臨戦態勢を維持する。 3 クロエに色々と申し訳ない。 4 ルーラーの動きに疑問。 5 折を見てバーサーカー主従を殺す。 [備考] ●所持金は3万円ほど。 ●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。 ●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。 ●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。 ●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。 ●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。 ●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪を使用しました。 【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】 [スタンス] 奉仕(切嗣) [状態] 筋力(10)/E、 耐久(20)/D、 敏捷(30)/C、 魔力(40)/B、 幸運(40)/B、 宝具(0)/- 魔力消費(小)、精神的疲労(中・消耗中)。 [思考・状況] 基本行動方針 衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。 1 まず家族と話す。 2 ルーラーと美遊の動きに疑問。 [備考] ●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。 ●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。 ●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪の影響下にあります。 ●イリヤ(sn)と魔力のパスを繋ぎました。 【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】 [スタンス] 未定 [状態] 封印解除、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(中)。 [残存令呪] 二画 [思考・状況] 基本行動方針 みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。 1 バーサーカーさんと一緒にがんばる。 [備考] ●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。 ●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。 ●第三の目を封印解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒される可能性が増えるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっていても妖力は消耗します。 ●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。 ●バーサーカーの【カリスマ D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。 ●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪を使用しました。 ●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されたので、気を使って聞かないことにしました。 【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】 [スタンス] 聖杯狙い [状態] 筋力(20)/D+、 耐久(30)/C+、 敏捷(20)/D+、 魔力(40)/B++、 幸運(20)/D、 宝具(40)/B+ 実体化、精神的疲労(小)。 [思考・状況] 基本行動方針 拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。 1 善後策を話し合う。 2 ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。 3 ルーラーの動きに疑問。 [備考] ●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。 ●同盟の優先順位はキャスター セイバー アーチャー アサシン バーサーカー ライダー ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。 ●衛宮切嗣 アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。 ●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。 ●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。 ●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪の影響下にあります。 ●切嗣から第四次聖杯戦争の概要を知りました。なおイリヤとアーチャーに関しては誤魔化されましたが、どうせこいつは下手な嘘をつき続けると思って無視しました。 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】 [スタンス] 聖杯狙い [状態] 程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。 [装備] 特別製令呪、いつもの紫の私服。 [残存令呪] 三画 [思考・状況] 1 とりあえずもう一人の自分と話す。 2 キリツグを殺す。 3 全員倒して優勝したい。 4 キリツグが他の誰かに殺されないように注意する。 5 明日の朝九時に間桐邸に向かう。 [備考] ●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。 ●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。 ●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。 ●自宅はアインツベルン城に設定されています。 ●アサシン(千手扉間)がハサンではないことに気づきました。 ●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。 ●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。 ●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。 ●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。 ●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。 ●ルナをホムンクルスではないかと 思っています。 ●クロから切嗣の世界の第四次聖杯戦争の情報、クロの世界のクロに関する若干の情報を得ました。また自分がこの聖杯戦争の小聖杯ではないことに気がつきました。 ●アーチャー(クロ)との間に魔力のパスを繋ぎました。 【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】 [スタンス] 奉仕(イリヤ) [状態] 筋力(50)/A+、 耐久(50)/A、 敏捷(50)/A、 魔力(50)/A、 幸運(40)/B、 宝具(50)/A、 霊体化、狂化スキル低下中、残機6(クウガのモーフィングパワー、剣、槍、弓への耐性)。 [思考・状況] 基本行動方針 イリヤを守り抜く、敵は屠る。 [備考] ●石斧の飛雷針の術のマーキングがあります。 【新都・西部/2014年8月2日(金)0245】 【色丞狂介@究極!!変態仮面】 [スタンス] 対聖杯 [状態] ダメージ(大)、疲労(極大)、『必勝法』を共有済。 [装備] 核金(種類不明)、S2U(待機)、カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [残存令呪] 0画 [思考・状況] 基本行動方針 聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。 1 間桐邸に戻り、事の顛末を伝える。 2 慎二に呼応して『必勝法』で聖杯戦争を止める。 3 吸血鬼達を警戒しているが…… [備考] ●愛子ちゃんのパンティ、携帯電話所持。 ●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。 ●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。 クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。 ●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、教授、大尉、セイバー(アルトリア)、アーチャー(赤城)のステータスを把握しました。 ●ホテルにいる主従達と情報交換しました。 ●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。 ●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。 ●この世界に関する考察を共有しました。 【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】 [スタンス] エンジョイ [状態] 筋力(10)/E、 耐久(20)/D、 敏捷(10)/E、 魔力(40)/B、 幸運(5)/D、 宝具(0)/なし、 魔力消費(微)。 [思考・状況] 基本行動方針 少佐と聖杯戦争を楽しむ。 1 少佐殿も教授も死んじゃったよ。 [備考] ●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。 【ゾーリン・ブリッツ@ヘルシング(裏表紙)】 [スタンス] エンジョイ [状態] 筋力(30)/C、 耐久(20)/D、 敏捷(30)/C、 魔力(30)/C、 幸運(10)/E、 宝具(0)/なし、 魔力消費(小)。 【ウォルター・C・ドルネーズ@ヘルシング(裏表紙)】 [スタンス] 未定 [状態] 筋力(30)/C+、 耐久(10)/E、 敏捷(30)/C、 魔力(10)/D、 幸運(10)/E、 宝具(0)/なし、 魔力消費(中)。 基本行動方針 自分がこの聖杯戦争に喚ばれた意義を探すのも一興。 【真田幸村@戦国BASARAシリーズ 討死】 【ドク@ヘルシング(裏表紙) 戦死】 【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド 消滅】 【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ 消滅】 【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA s 凍結】 【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 凍結】 【???@第二次二次二次キャラ聖杯戦争 凍結】
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聖杯戦争の概要、といっても詳しくここに書くのもアレなのでそれは調べて貰うとして ここでは元ネタの聖杯戦争との差を書いておくとします マスターについて マスターは魔力の強い人間が近くにいた場合、それが誰かを感知できる(魔力をあまり持っていない人は把握しきれない。これも個人の能力による) マスターはサーヴァントを視認した時、スキル、宝具により妨害が無い限り、パラメータを把握できる ここらは大体同じで、第一回目は追加で 宝具、真名に関して 真名を解放する宝具の場合(例えば武器、エクスカリバー等) それの所持者を候補として絞る事ができる。 真名を解放しない宝具も、発動し、それを明確に観測した場合、敵対者及び宝具の対象者は大凡の目処を立てる事が可能。 使い魔の使用、または観戦した場合は真名解放の宝具であろうともなんとなくわかる程度で留まる。 観戦情報からは真名看過はできないとする。どれだけ情報収集をしても一定以上から進まず、なんとなくこんな感じの宝具がくるかもしれない、位の認識。 また、真名が割れた場合、宝具がどんな物かというのを大体で把握可能。 真名を探る場合も〝キャラクターの観点に立ち〟〝その上でどの情報を引き出せばいいか〟等を明確に行えた場合。 更に候補を狭める、または真名を把握できる事とする。 を、マスターには追加します つまりはいい勝負をすれば、中身が割れるという事になります。 また、今回の聖杯戦争においては、一次、二次共に何の問題もなく、規則も確かな物として執り行われた事となっています。 + ネタバレ注意 聖杯の正体は「願望器」ではあるが、その本質は原作のそれと大きく異なる。 その実態は「どこでもドア」に近く、無限に存在する平行世界を観測し、手向けられた願いに最も近い可能性の平行世界に優勝者を転送する「FAX」のようなもの。 ただ致命的な欠陥が存在し、願いを叶えた優勝者は存在そのものが別の平行世界に転送されるため、願望の成就後に元の世界からは優勝者の存在は抹消される。その際に「あるべきはずの存在」が消失することで、現行の世界に歪みが生じ、剪定事象化──、すなわち「元の世界は消滅する」ことになる。 なお、優勝者は平行世界におけるもう一人の自分の意識に上書きされる形で転送されるため、そちらの世界にはなんら影響を及ぼさない。 今回の聖杯は、優勝者の願いは叶えるが、代償として古の世界を消滅させるという「粗悪品」なのだ。
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「名探偵れんちょん/迷宮の聖杯戦争」 ◆IbPU6nWySo ルリたちはようやく新都と呼べる都会の地に足を踏み入れる事ができた。 そして、ここからアキトのいる教会へ――…… その時、ルリの携帯端末が鳴る。 アキトの存在が脳裏に過るが、仕方なしに電話を取った。 「はい……」 案の定、現場放置した一件を指摘された電話である。 仕方ない事とは言え、やはり度過ぎた行動だったのかもしれない。 お叱りの言葉を受けルリの頭も少々冷えた。 さすがに酷いお咎めは受けなかったものの、これからは注意をするようにと告げられた。 穏便な表現を使ってはいたが、やはり異常事態が続く中。 一人でも貴重な人手が欲しいのが警察としての本音だろう。 連絡を切り、一息をついた。 ふと見上げればすでに夜空が広がっている。 純粋無垢な瞳で、れんげが問う。 「るりりん、またお仕事なん?」 「はい。これから忙しくなりそうです。れんちょんさんは春紀さんと合流したら、彼女と行動してくれますか?」 「分かったん。ウチ、はるるんたちと一緒にかっちゃんたち探すのん」 「ありがとうございます」 さすがに、夜が近くなってはルリとはいえ子供を連れて歩くのは不自然だ。 たとえルリに警察の身分があったとしてもである。 ルリは改めて計画を立てた。 冷静になった事で、自分がアキトの存在により熱くなっていたことを知る。 アキトが教会にいたのは昼。 もう現在の時刻は夜に近い。 数時間も、よっぽどの事態がない限り、アキトが教会に居続けるとは思えなかった。 ならばあの食堂に帰宅するアキトを待ち構えた方がいいかもしれない。 ただ、アキトが食堂に帰るかも定かではない。 むしろ彼に関して、春紀に協力を求めるのも悪くはないのでは? あの様子からアキトと春紀はNPC時代からの交流がある。 彼女もいれば心強い。 春紀との合流は必須かもしれない。そして、夜は彼女にれんげを任せるべきだろう。 ルリは一息ついた。 「では、少し仕事に戻りましょう」 ◆ ◆ ◆ ◆ 仕事に戻る。とは言ったが、警察署や現場へ向かうのではなく。 彼女はれんげと共に近くの喫茶店で、紅茶とケーキを食しながら端末機器で情報を仕入れていた。 例の食堂にも近い場所をキープして置きたい事もある。 午後に発生した事件及び通報内容を簡易的にまとめたものを送って欲しい。 ルリの要望に是非ともお願いしますと、あっさり情報が送られた。 こういうのは機密情報が云々と口うるさくなるものかと思えば、そうでもないようだ。 むしろ、皆出払っていて、情報の整理をして欲しいと感謝されたほど。 微妙ないい加減具合がNPCらしい。 とにかく、発生した事件・通報のあった事件の概要に意識を集中させることにした。 ◇ ◇ ◇ ◇ 1、B-3で発生した爆発及び銃撃事件。 時間帯としては大体、ジナコ(カッツェ)の暴動事件と同時刻に発生している。 午前中。 それも白昼の最中、炸裂音と煙があったことから周辺住民が警察に通報。 現場に駆け付けた時には、すでに事は終わり、経口の異なる弾痕が発見された。 現段階においてはヤクザ同士の抗争ではないかと処理されている。 こういう場合、線条痕の特定をするはず。 ――特定できない線条痕ならば 重火器の類……『アーチャー』のサーヴァントによる戦闘だろう。 しかし、ルリは現場に居合わせていない為、それ以上の特定は不可能であった。 別の視点、とある副会長と戦争狂は噂話から『赤い車』の目撃情報を入手していたものの。 それは警察が信憑性のある情報として受け止められておらず、ルリに送られたデータにはなかったのだ。 残念ながら考察はここまでに止まった。 ◇ ◇ ◇ ◇ 2、B-4の住宅街で発生した暴動。 一種の小さな暴動。 昼過ぎの頃、小さな住宅街で主婦が起こした悪質なイタズラがあったのが始まり。 容疑者は野原みさえ。 数名のNPCが口を揃え、犯行を目撃しているのだ。逃れようがない。 それと現場付近で彼女の夫・野原ひろしが呆けていたという。 また、息子・野原しんのすけが行方不明。 平凡な一家が壊滅するという奇妙な事件。 ただ、第三者のルリにとってはデジャヴを感じた。 ジナコが起こした暴動事件と犯行手口が酷似している。 人を煽る様にして悪意を振りまき、容赦なく被害をもたらす。 ほんの些細で、小悪な手口。現場を見たルリだからこそ、状況が酷似していると感じたのだ。 ジナコの件もそうだが、聖杯戦争のマスターが関わっている可能性を考慮すると その野原一家に注目する必要性があった。 ◇ ◇ ◇ ◇ 3、図書館での怪奇事件……? 次は通報の一つである。 図書館の周辺で化物を見た。変に艶めかしい男がいたのだが、その男が化物に変貌した。 体の原型がなくなり、蝙蝠やら犬やらムカデといった不気味なものを出現させ…… 正直、信憑性のない馬鹿げた通報だ。 一般常識の、NPCの認識としては。 何より通報はその一つだけで、通報者は名前を告げる事もなく、わざとらしいくらいに錯乱しており。 まともに取り扱う事案ではないとイラズラ扱いの処理を受けていた。 しかし、聖杯戦争においては重大な目撃情報である。 これならもう少し事情を聞いて欲しいかったとルリも不満を抱くが 所詮はNPCの行動だ。仕方がない。 間違いなくサーヴァント同士の戦闘だ。しかし、情報が情報なだけあって何一つ考察できない。 一応、現場の調査もしてみるべきか……? ◇ ◇ ◇ ◇ 4、B-4の高層マンション倒壊。 原因不明。欠陥が見られなかったというマンションが跡片もなく倒壊。 マンション住人の所在や被害規模は現在調査中。 地盤沈下の恐れもあるため、周辺住人の避難などが行われているらしい。 何より重要な大魔王バーンの姿の情報。 現地の警察がそれを確認しているらしいが、情報が信憑性にかけており ひっそりと、流し読みをしていたら見逃してしまいそうな一文だった。 それと、マンションに住む一人の刑事の存在を知る事ができた。 キャスターのマスターであった、そして現在はアサシンのマスター・足立。 本日、有休を取っており、未だ連絡がつかないらしい。 マンションにいたならば巻き込まれた可能性が十分あった。 ルリとしては、何故か今日有休を取り、違反が行われたとされるB-4に住む人物として。 足立が聖杯戦争に関与していると推測する。 念の為、足立の情報依頼のメールを送信した。 ◇ ◇ ◇ ◇ 5、月海原学園爆発事件 これも現在進行形の調査が行われている最中のもの。 事件の発生時間から推測するに、恐らく春紀は巻き込まれてはいないだろうとルリは判断した。 現場に向かった彼女から詳しい話を聞けるだろうが、念には念を。 ルリは文面に目を通す。 通報は学園職員からだった。その他、周辺住民からの通報も多々ある。 学園内で原因不明の爆発が発生した。具体的な被害報告はまだハッキリとしない。 教室が爆発し、壁に穴が開いているといった見ただけの情報だけだった。 これもまた聖杯戦争の一つ。 しかし、学園内で戦闘を起こすとは大胆不敵とも言える行為だ。 学園内にいる主従をおびき寄せる為だろう。 小中高一貫の学園だ。敵が複数いると踏んだ行動なのかもしれない。 事実として、春紀もその一人。 そして、この戦闘により何組の陣営が揃ったのだろうか。 全ては春紀の情報、あるいは警察NPCの情報次第だ。 ◇ ◇ ◇ ◇ 6、新都暴動事件 最後はジナコが起こしたとされている暴動事件だ。 れんげのサーヴァントが容疑者と挙げられている以上、無関係でありたいながらも目を通すしかなかった。 サーヴァントが犯人である以上、NPCに期待以上の成果を求めるのは無駄。 ……かのように思われたが、意外なことに一時、ジナコ宅で張り込みをしていたNPCが 彼女を確保したとの報告があったのである。 信じられないことにジナコは自宅に戻っていたのだ。 ――そんな訳がない。 『本物の』ジナコが自宅に引きこもっていたと訂正するべきだろう。 自宅を出たところを確保したものの、突如現れた男により妨害を受け、そのまま逃亡を許した。 男。 それはジナコのサーヴァントの可能性が高い。 ルリも一応、この事件の途中経過を確認することにした。 ◇ ◇ ◇ ◇ 以上がルリが注目した事件。 些細な通報を一々目に通すのは苦労がかかるし、重要なところをピックアップしたつもりである。 「確かにこれは大変ですね……」 深見町から新都まで、立て続けに発生する事件に方舟の警察は右往左往だ。 猫の手も借りたい状況だからこそ、ルリに対してのお咎めの電話が来るのも頷ける。 こんな事態で私用の行動を取るのは自分勝手にもほどがあった。 携帯に電話が入る。 それはルリが依頼したもう一つの情報についてだ。 彼女が依頼したのは――方舟におけるれんげの調査。 れんげにはNPCとしての立場がないと、証言から聞き取れるが。 それは、れんげが聖杯戦争を理解していないように、NPCの立場を理解しておらず 本来の村にいる自分自身の事を述べているだけかもしれない。 決して、れんげを疑っているのではなく。 れんげが子供であるからこそ、正直さによる情報の誤差の可能性を考慮したのだ。 調査の結果、少なくともデータベース上に『宮内れんげ』という少女は存在しなかった。 とはいえ、まさか無戸籍の浮浪少女なんて立場を、NPC時代から与えられていたとは考えられない。 むしろ、少女のれんげにとっては不利極まりない状況ではないか。 いささか『不平等』である。 彼女がいくら聖杯によって選出された少女とはいえ。 右も左も分からない土地に、宿なし金なしの状態で放り込むとは理解できなかった。 何せ、方舟にハッキングし、強制的な形でマスターとさせられたルリですら警視という立場を与えられたのだ。 れんげの対応とはまるで違う。 『やはり、れんちょんさんについてルーラーさんに確認してみるべきですね』 『裁定者が教会にいるとは聞いたが、場所までは告げてられていない。探すことになるな』 『そうでした……』 何より――アキトはどうする? どうにかして、何としてでも彼と接触したいのに。 方舟が与えた使命が、彼女とアキトの出会いを妨害するように感じる。 方舟がルリを嘲笑するように与えた罰なのか。 しかし。 警察としての信頼を失ってはこのように情報を提供してくれる事がなくなりかねない。 こういった情報は、やはりルリも有難味を感じた。 ただただ迷う。 ルリは再び携帯を見つめる。 教会のことはアンデルセンに尋ねるのが良い。向こうにアキトがいるか、事のついでに確かめてくれそうだ。 春紀とアキトについて話し合いたい。そして、これからの行動も――…… 「るりりん! 大変なん!!」 唐突にれんげが叫んだのでルリもビックリしてしまう。 「れんちょんさん……? どうしたのですか??」 「あっちゃんが死んじゃうかもしれないん!」 「……え?」 ◆ ◆ ◆ ◆ れんげは悩んでいた。 ある意味、名探偵の如く推理をしているのかもしれない。 彼女が挑んでいる謎解きとは――アーカードとアンデルセンがどうして不仲であるのか。 本当に喧嘩をするつもりなのか。 ハッキリ言って不仲なのは間違いない。 アンデルセンがアーカードの事を真っ先に問いただした際、明らかに声色が違った。 わずかな悪意。 この場合は殺意と言うべきか。 とにかく、悪意のある感情を抱いているのは明白だ。 しんぷはあっちゃんと仲が悪い。 アーカードの方はどうだろう? それは分からない。 喧嘩をするつもりなのか? れんげはアンデルセンの言いまわしではなく、雰囲気だけで推察する。 何となく、あの感じは村でもよくあったのだ。 ――れんげちゃんには関係ないよ 村の人間は最近よく口にする。 誰かの悪口を呟いている時もそう。 ――れんげちゃんの事じゃないからね アンデルセンが喧嘩を否定した際も、どことなく似たような雰囲気を感じた。 なら喧嘩をするつもり………? いや、この場合はアーカード以外の誰かと喧嘩をするつもりでは。 ならばジョンスのことか? それも違う気がする。 しんぷもあっちゃんも悪い人じゃないん。 なのに、なんで喧嘩するん? 何故、喧嘩をするのか。れんげには理解できなかった。 こればっかりは、悪意に充満した村に住んでいたれんげも知らない。 犯行の動機。 カッツェならば何と答えるか。 実はれんげがこの質問をカッツェにした事がある。 『えwwwwwwww喧嘩する理由ッスかwwwwwwwそんなのありませぇんwwwwwww』 そして、これが回答。 いくられんげとはいえ納得できる答えではなかったのだ。 親友の言葉だが、唯一納得しなかった言葉。 『そんなのおかしいん。みんな、きっと何かあるん』 『れんちょんwwwwそんなことないっすぅwwwwおかしな現象はありまぁすwwwww』 面白可笑しく、笑みを浮かべながら述べる悪意の体現者。 『なんかさぁwwwwwあwwwwコイツむかつくwwwwwマジ死ねばいいのにwww って思っちゃうこと、結構あるんすよwwwwwwみぃんなwwwwwww』 『ウチ、そんなこと思った事ないん』 『れんちょんも、大人になれば分かる様になるっすよぉwwwwwwww』 ……ウチ、かっちゃんの話。嘘じゃないと思うん。 でも、しんぷもあっちゃんも『いい人』なん。 喧嘩なんて簡単にするはずないん。 ならば――動機とはなにか。 れんげがうんうんと悩んでいると、先ほどまで口にしていたケーキがあった空皿に注目した。 春紀たちが食事したように、アーカードたちも食事をしているのだろうか。 「あ……!」 れんげは重大な問題に気づいてしまった。 それは――――アーカードが吸血鬼であることだった。 重大なのはアーカードが化物である事ではなく、アーカードは血を食べなければならない事。 そう、人の血を。 人の血を吸うなど普通にできる事ではない。 コンビニやレストランで人の血が提供される訳がない。 一度れんげがそれを問うた時、彼は本当は腹が減って血を食べたかったのかもしれない。 アーカードが人を襲って血を吸う? そんな訳ない。アーカードは『いい吸血鬼』だからそんな事は絶対にしない。 きっと飢えに耐えているのだ。 その程度の常識、れんげも承知していた。 だが、アーカードがサーヴァントである為、食事を必要としない常識は知らなかった。 「るりりん! 大変なん!!」 一刻の猶予はない。 れんげはルリに対して必死の説得を決行した。 「れんちょんさん……? どうしたのですか??」 「あっちゃんが死んじゃうかもしれないん!」 「……え?」 ルリは突如としてれんげの主張に、アンデルセンとアーカードが争うことを不安にしていた事かと こう返答する。 「アーカードさんたちは喧嘩しないと思います」 「違うん! あっちゃん、血を食べないといけないん!! お腹すいて死んじゃうん!!」 「………????」 どうして重要な事に気付かなかったのだろうと、れんげは慌てていた。 しかし、ルリにはさっぱりである。 血を食べる? ルリはれんげに問う。 「アーカードさんは……吸血鬼、なんでしょうか」 「うん……」 初歩的な質問だが、ルリはその初歩的なことを知らなかった。 実はアンデルセンからも告げられていない。 彼女が聞いたのはアンデルセンの因縁のある存在であるという事実のみ。 吸血鬼であるならば話さなかった理由も分かる。 れんげの為だ。 少なからずアーカードを好意的に受け止めているれんげにとって、彼が化物である事はショックな真実だろう。 しかし、れんげはすでに知っていた。 『サーヴァントは食事を必要としないんですよね』 『多少の魔力の回復を促す程度だ』 恐らくアーカードにも吸血は不要のはず。 ……それをどうれんげに伝えるべきなのかが問題だ。 「かっちゃんさんは食事を取っていましたか?」 「? ……駄菓子屋のおかし、一緒に食べたりしてたん」 「そう、ですか……」 かっちゃんと同じで食事は要らないと教えるつもりが、出来ない。 何をどう伝えればいいのだろう。ルリは悩んだ末に口を開く。 「毎日、血を食べる必要はないんです。だからアーカードさんは大丈夫です」 「でも今日、ウチの血を食べたかったみたいなん」 「それは……」 「今日、食べないとあっちゃん死んじゃうん…………」 「……八極拳さんが食べさせてあげていると思います」 「八極拳が?」 「だから安心して下さい」 「本当なん……?」 「はい」 何とか言い訳をした。 あまり表情の少ないれんげから心情を察するのは難しいだろうが、どうにかなった。 ルリは、そう判断してしまった。 一方。 ルリの曖昧な口調、話す雰囲気から嘘をついているのでは、とれんげは感じてしまった。 積み重なる不安・不信感。 子供のれんげですら耐えられず、疑心を抱く。 どうして、るりりんは嘘つくん……? アーカードが血を食らう化物だと知ったからか? そんな事はない。 アーカードは『いい吸血鬼』だとれんげは思う。 同時に彼女は一つの考えに辿りついた。 だから、しんぷもあっちゃんの事……嫌いなん? 化物だから。 アーカードが化物だから敵意を見せているのか。 違う、違うのだ。 そんなことはない。 アーカードは『いい吸血鬼』なのだ。 二人とも勘違いをしている。 ルリたちがアーカードに敵意があるならば、血を与えるのを妨害しているのかもしれない。 やっぱり、あっちゃん。お腹すかせているん……… お腹がすくと力が出ないし、とても苦しい。アーカードは辛い思いをしているはずだ。 れんげにとってはいてもいられない。 ここにいる人間は素直にアーカードに血を提供してくれるか分からないのだ。 八極拳が本当に血をあげているかも分からないのだから。 かっちゃん……かっちゃん、どこにいるん…… カッツェは消えたり現れたりできる。すぐにアーカードのところへ連れて行ってくれるはず。 だけど、その親友はどこにもいない。親友を探さなくてはならない。 その親友に頼んで今すぐにでもアーカードのところへ向かいたい。 アーカードは無事か。 腹が減っているなら自分の血でいいから飲ませてあげたい。 だけどもルリという監視がついている以上、れんげは自由に身動きができなかった。 まるで『籠の中の鳥(ガッチャマン)』のように。 かっちゃん………たすけて……… 果たして彼女の想いは伝わったのか、まだ誰も知らない――…… 【B-9/喫茶店/夜間】 【ホシノ・ルリ@機動戦艦ナデシコ~The prince of darkness】 [状態]:魔力消費(中) [令呪]:残り三画 [装備]:警官の制服 [道具]:ペイカード、地図、ゼリー食料・栄養ドリンクを複数、携帯電話、カッツェ・アーカード・ジョンスの人物画コピー [所持金]:富豪レベル(カード払いのみ) [思考・状況] 基本行動方針:『方舟』の調査。 1.アキトを探す為に……? 2.寒河江春紀の定時制高校終了後、携帯で連絡を取り合流する。 3.『方舟』から外へ情報を発する方法が無いかを調査 4.優勝以外で脱出する方法の調査 5.聖杯戦争の調査 6.聖杯戦争の現状の調査 7.B-4にはできるだけ近づかないでおく。 8.れんげの存在についてルーラーに確認したい。 [備考] ※ランサー(佐倉杏子)のパラメーターを確認済。寒河江春紀をマスターだと認識しました。 ※NPC時代の職は警察官でした。階級は警視。 ※ジナコ・カリギリ(ベルク・カッツェの変装)の容姿を確認済み。ただしカッツェの変装を疑っています。 ※美遊陣営の容姿、バーサーカーのパラメータを確認し、危険人物と認識しました。 ※宮内れんげをマスターだと認識しました。カッツェの変身能力をある程度把握しました。 ※寒河江春紀・ランサー組と共闘関係を結び、携帯電話番号を交換しました。 ※ジョンス・アーカード・カッツェの外見を宮内れんげの絵によって確認しています。 ※アンデルセン・ランサー組と情報交換した上で休戦しました。早苗やアキトのこともある程度聞いています。 ※警視としての職務に戻った為、警察からの不信感が和らぎましたが 再度、不信な行動を取った場合、ルリの警視としての立場が危うくなるかもしれません。 【ライダー(キリコ・キュービィー)@装甲騎兵ボトムズ】 [状態]:負傷回復済 [装備]:アーマーマグナム [道具]:無し [思考・状況] 基本行動方針:フィアナと再会したいが、基本的にはホシノ・ルリの命令に従う。 1.ホシノ・ルリの護衛。 2.子供、か。 [備考] ※無し。 [共通備考] ※一日目・午後以降に発生した事件をある程度把握しました。 ※B-3で発生した事件にはアーチャーのサーヴァントが関与していると推測しています。 ※B-4で発生した暴動の渦中にいる野原一家が聖杯戦争に関係あると見て注目しています。 ※図書館周辺でサーヴァントによる戦闘が行われたことを把握しました。 ※行方不明とされている足立がマスターではないかと推測しています。警察に足立の情報を依頼しています。 ※刑事たちを襲撃したのはジナコのサーヴァントであると推測しています。 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]魔力消費(回復)ルリへの不信感 左膝に擦り傷(治療済み) [令呪]残り3画 [装備]包帯(右手の甲の令呪隠し) [道具]なし [所持金]十円 [思考・状況] 基本行動方針:かっちゃんたちどこにいるん……? 0.かっちゃん、たすけて…… 1.このままだとあっちゃん、おなかすいて死んじゃうん…… 2.るりりん、どうして嘘つくん? 3.はるるんにもあいたい、けど――― [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 ※カッツェにキスで魔力を供給しましたが、本人は気付いていません。 ※昼寝したので今日の夜は少し眠れないかもしれません。 ※ジナコを危険人物と判断しています。 ※アンデルセンはいい人だと思っていますが、同時に薄々ながらアーカードへの敵意を感じ取っています。 ※ルリとアンデルセンはアーカードが吸血鬼であることに嫌悪していると思っています。 ※れんげの想いが念話としてカッツェに通じたのかは不明です。後続の書き手様にお任せします。 BACK NEXT 131 悪意の所在 投下順 133 クラスメイト 131 悪意の所在 時系列順 129 犯行(反攻) BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 103 大人と子供 ホシノ・ルリ&ライダー(キリコ・キュービィー) 141-a we are not alone 宮内れんげ
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伝説を呼ぶマジカル聖杯戦争!◆IbPU6nWySo 「しんのすけ!こっちこっち」 集まっていた『かすかべ防衛隊』の風間トオル、ネネ、マサオ、ボーちゃん。 トオルがしんのすけに気づき声をかけたことで、残りのネネたちもしんのすけに振り返る。 彼らはしんのすけの知る『かすかべ防衛隊』のメンバーを模したNPCに過ぎない。 しかし、しんのすけは違和感すら覚えず、いつも通りに接している。 「どうしたの?皆、集まってぇ~」 ボーちゃんが途切れ途切れの口調で話す。 「今日、あった火事。家から見えた」 「カジ?」 「しんのすけはニュース見てないのか?倉庫で原因不明の火災があったって奴! ボーちゃんの家の近くだったんだ」 「ほうほう、なるほど?もしかして犯人見たの?」 「犯人……見た!」 ボーちゃんが言うとさすがの全員が「えー!?」と口を揃えて叫ぶ。 が、周囲にいる先生や他の子供たちに怪しまれないように、慌てて固まってヒソヒソと話し合う。 マサオが震え声で 「ど、どんな人だった!?」 続いてネネが 「もしかしてテロリストって人じゃない!?」 割り込んでトオルが 「そっ、そもそも何で警察の人に話してないんだ、ボーちゃん!?」 最後にしんのすけが 「美人のおねいさんですか?」 「「「んな訳あるか!」」」 と、ボーちゃんを除く者が突っ込んだ後。 その当人がゆっくりと話す。 「多分、女の人!」 「おおー!これは『かすかべ防衛隊』の出番ですなー!!おねいさんを捕まえに行くんだゾ!!」 「ちょっ……ちょっと待てよ!ボーちゃん!本当に見たのか?犯人を!」 「見た!でも」 「「「「でも?」」」」 「空、飛んでた!」 空を飛んでいた……? 普通ならばありえないし、子供の迷い事だろうと大人は受け入れないだろう。 だが、しんのすけたち子供は純粋に受け入れる。 もし空を飛んでいる女性が実在するとすれば、きっとそれは―― ネネがパァッと顔を明るくして言う。 「ボーちゃん!それって魔法使いよ!!」 「そう、思う」 「すごーい!魔法使いって本当にいるのね!!」 魔法使いと聞いて何故か浮かれ顔するトオルは我に返って反論した。 「何かの見間違いってことは――」 しかし、マサオがそれを遮って 「でも悪い魔法使いって事だよね?火事起こしたんだよ??」 「もう!マサオ君、決めつけないでよ!もしかしたら悪い人と戦ってる魔法使いかもしれないじゃない!!」 「そうかもしれないけどぉ~~……」 「オラも魔法使いのおねいさんと会いたいから『かすかべ防衛隊』でおねいさんを探すゾ!」 「気になる、探そう」 「ネネも探す!!」 「あっ、待って、ぼ、ボクも……」 「僕も話に混ぜろよ!!!!」 シラを切らしたトオルが吠えると、全員が戸惑う。 一息ついて改めてトオルは皆に話した。 「火事のこともあるけど。最近、町が変だと思わないか? ニュースだと殺人事件や盗難事件…遠くでビルが倒壊したって話も聞いたんだ」 物騒な話を持ち出した為、マサオが顔を青くする。 「さつ、殺人!?本当なの!??」 「静かに!だから最近、先生たちも外に出るなって厳しいだろ?」 「言われてみればそうね…」 「オラはてっきり組長(園長)が裏で権力を広げているかと…」 「……しんのすけは黙ってろっ」 「…あっ、そういえばオラ。近所にいるおまわりさんからその話聞いたかも」 「本当かっ!?」 「聞きたい?」 「もったいぶらず教えてくれっ!」 「じ・つ・はぁ……」 トオルも事件に関心があった事から、こっそりと耳打ちしようとするしんのすけに 耳を傾けて真剣に聞こうと身構えていた。 周囲の『かすかべ防衛隊』も息を飲む。 …が、しんのすけは「フゥー」とトオルに耳を吹きかけただけであった。 耳の弱いトオルはへにゃへにゃになって倒れ込み、しばらく間を開けてからしんのすけに怒る。 「教えろよ!」 「いやぁーそれがあんまりお話してくれなかった」 「しかも情報ないのかよ!!」 「お、落ち着こう?風間君……」 怒り治まらないトオルをマサオが宥める中、ボーちゃんが淡々と言う。 「守秘義務」 そういえばとネネも思い出した。 「ドラマで見た事あるわ。警察の人って事件の事を話しちゃ駄目なんだって」 マサオも便乗するかのように「ボクも知ってる」と続けた。 守秘義務の意味を理解できないしんのすけは唸るだけ。 近所にいるおわまりさんこと足立にお願いすれば、ボーちゃんが見た魔法使いのおねいさんの情報は手に入るだろうか? 否。 あの頼りなさげな足立は知らないだろうとしんのすけは結論する。 「オラの知ってるおまわりさんは殺人犯こわぁーいってビビってるしぃ…おねいさんのこと知らなそう」 「そんな警察の人いるのか?しんのすけ」 「なんだかマサオ君みたーい」 「な、なんでボクなの!?」 それぞれが口々に言葉を並べ、ボーちゃんが最終的に問う。 「じゃあ、どうする?」 トオルが身を起こして、待ってましたと言わんばかりに口を開いた。 「そこなんだ!そもそも僕たちが何なのか、忘れた訳じゃないだろ?」 「ボクたち…?」 「『かすかべ防衛隊』?」 「防衛隊だよ!町の平和を守る為の防衛隊じゃないか!!僕たちで出来る限りのことをしよう!」 「そ、そんなの警察の人にまかせようよぉ……」 「でも、あのおまわりさんにまかせてたら町の平和は永遠に訪れませんな」 「怖い事言わないでよ!しんちゃん~~~~!!!」 そして全員の情報をまとめる作業から始まった。 丁度、幼稚園ではお絵かきの時間となっており、絵を描くついでに しんのすけたちは町の事件を絵としてまとめたのである。 まずは火事でボーちゃんが目撃した女性の魔法使いの件。 彼の目撃によると彼女は空を飛び、大きな旗を持っていたらしい。 これは火事により目を覚ましたボーちゃんが双眼鏡で周囲を確かめた際、目撃した事実である。 魔法使いならば杖ではないのか? 何故、旗なのか? もしかしたら魔法使いではないのかもしれない。 そして彼女が火事の首謀者なのか? 次に足立も追っているであろう猟奇殺人事件。 具体的な被害は不明である。 その中には模倣犯もいるかもしれない。 子供であるしんのすけたちが一番関わってはいけない事件だ。 皆、それは承知しているらしく積極的ではなかった。 次は商店街で発生した盗難事件。 あちこちで盗難の被害があったが、現金は盗まれておらず 何故か食品類が大量に盗まれたらしい。 犯人は飢えていたのか? また現金があれば食品だって買えるのに、現金を盗まなかったのは何故か? 最後はビルの倒壊。 倒壊したのは廃ビルであったことから老朽化による倒壊が一番の可能性だ。 しかし、故意の倒壊だった場合。何を意味するのか? 「よし!出来たぞ」 それらの情報をトオルが地図にしてまとめた。 彼の記憶の通り、それらの事件が発生した場所がハッキリと分かる。 殺人事件は場所が特定されていないことから印のようなものはないが十分であろう。 完成したそれにしんのすけたちは一種の感動を感じた。 「こうしてみると色々あったんですなぁ」 「感傷にふけるような発言するなっ、今も何か起こってるんだ」 「じゃあ、おねいさん探ししよう!風間君!!」 「僕は今日、塾があるんだ。英会話のね」 えー!?と驚愕と落胆の声をしんのすけたちが上げる。 ネネが続けて 「誘ってきた風間君の方が用事あるってどういうことよー!?」 「仕方ないだろ。それに今日計画立てて、明日、皆で探索しようと思ったんだ」 「ネネ、明日ママと一緒にご飯食べに行くつもりなのよ?」 「ボクも用事が……」 「みんな、明日が、忙しい」 「アラ!それじゃアタシと二人きりねっ♪」 「しんのすけと僕だけじゃ意味ないだろっ!!」 「えー」 「えー。じゃない!」 タイミングが合わないとなった以上、子供たちはやる気が削がれてしまった。 トオルも自分が持ちかけておいて止めようと掌を返したのだった。 その後しんのすけは外で会った女性NPCにナンパをしていた。 幼稚園児ながらのナンパで「何見てるの~?」と聞いて見たところ、不思議な証言を得た。 映像は女性が撮ったものではなく彼女の友人がくれたものだという。 友人はどういう訳か記憶が曖昧で「いつの間にか映像があった」と言い、送ってきたらしい。 しんのすけが見た映像は 男性が二人喧嘩しているところを赤いコートを着た男性が割り込み制したといった内容だった。 赤いコートの男性がこちらを見た瞬間。映像は終わる。 魔法使いの女性、殺人事件、盗難事件、ビルの倒壊、喧嘩……そして、しんのすけだけが知るニンジャの存在。 あのニンジャは何故やってきたのだろう? それは事件を関係があるのか? しかし、しんのすけは子供だ。深くは考えられない。 「よし!決めたゾ! オラ、魔法使いのおねいさんが美人かどうか確かめる!!」 こうして、しんのすけの聖杯戦争が始まった。 【B-4/幼稚園/一日目 午前】 【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】 [状態]健康 [令呪]残り三画(腹部に刻まれている) [装備]なし [道具]なし [所持金]無一文、NPCの親に養われている [思考・状況] 基本行動方針:普通の生活を送る。 1.ニンジャは呼べば来る…… 2.魔法使いのおねいさん(ルーラー)を探す [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 ※一日目・未明に発生した事件を把握しました。 ※ルーラーについては旗を持った女性と認識しています。 ※映像によりアーカードの姿を把握しましたが共にいたジョンス、れんげについては不明です。 BACK NEXT 053 落とし穴の底はこんな世界 投下順 055 diverging point 049 シンデレランサー 時系列順 055 diverging point BACK 登場キャラ NEXT 049 シンデレランサー 野原しんのすけ 076 アサシン・オブ・アンタイ・オバケ・ニンジャ
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聖杯(Holy Chailce) 「最後の晩餐」において、キリストが弟子達に「私の血である」としてワインを注ぎ、振舞ったという杯。 弟子達の手によって各地に運ばれ、その土地で様々な伝承を成した。よって一つだけではない。 またこの聖杯がヨーロッパにおいて騎士道物語に取り入れられ、聖杯探求の旅が描かれる「聖杯伝説」物語郡が生まれた。 「アーサー王伝説」で騎士達が探索に出された聖杯もこれである。 手に入れた者のあらゆる願いを叶えるという願望機であり、最高位の聖遺物。 しかし、真実の聖杯を手にした者はおらず、伝説の域を出ないとされている。 冬木の聖杯(Holy Grail) 数十年に一度冬木の土地に現れる、あらゆる願いを叶えるという器。 これだけなら出来の悪い与太話で終わってしまいそうなものだが、その奇跡の一端を「サーヴァントの召喚」という形で示す事で「真贋はともかく規格外の魔術礼装」として認知されている。 器は願いを叶える「願望機」としての役割も確かに持っており、儀式の完成によってもたらされる膨大な魔力を用いれば大抵の願いは叶えることが可能なので、実質的には真作の聖杯を手にしたのと変わらない。
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開催予定 日帰り乱発開催 月2~3回 トレーラー 「さて、聖杯戦争を始めようか!」 ここはなんやかんやあって聖杯が大量生産されるようになってしまった世界線。 魔術協会と聖堂教会も管理しきれない程の数、されどうっかり問題のある使い方をされればたまったもんじゃない。 というわけで両組織は各地で小規模の聖杯戦争を開催しまくり、適度な願いで聖杯を消費しまくってやろうという結論に至った。 「というわけでみんな、宝くじ感覚で願いを叶えちゃおう!」